ハエトリグモは日本にも生息するクモの仲間です。その名のとおり、ハエなどの小型の虫を主食にしています。
一目で他のクモと区別がつくようなユニークな外見をしており、特に正面についた4つの眼が印象的です。
今回はあまり知られていないであろうハエトリグモの、ユニークな事実をご紹介します。
1. ハエトリグモには多数の種類が存在する

ハエトリグモは、ハエトリグモ科に属するクモの総称です。その仲間を集めて同窓会をするとなると、かなり広いスペースが必要になるでしょう。
現存するもので6,000種以上が確認されており、これは世界最大のクモのグループになります。
ハエトリグモは多種というだけでなく、色や形、大きさも様々です。
2. 世界中のほとんど、どこにでもいる
ハエトリグモは、北極、南極を除いた世界中のほぼすべての地域に生息しています。ハエトリグモから逃れるためには、極地に行くしかありません。
主に熱帯地域に生息していますが、寒冷地でも確認されています。例えば、1975年には大英自然史博物館の研究者が、エベレスト山の斜面でタオカハエトリグモを発見しています。
標高6,700メートルに住むカタオカハエトリグモは、恐らく世界で最も標高の高い場所に住む動物であると言われています。

3. とてつもないジャンプができるが、筋肉質ではない
ハエトリグモは、英語で”Jumping Spider”と呼ばれています。自分の体長の50倍も跳ぶことができることから命名されました。
当然、このクモの脚はものすごく筋肉質だと思われがちですが、実はそうではありません。ハエトリグモは、分節化された脚と血流を利用して、驚異的なジャンプを実現しているのです。
ジャンプする態勢が整うと、クモは体の上部の筋肉を収縮させ、血リンパ圧(人間の血圧に相当)を極端に変化させます。これによって血液が脚に送られ、脚が急速に伸びます。この脚の急激な伸びが、狙った方向への推進力となっているのです。
4. ジャンプのときにはちゃんと命綱を持っている

命知らずの大ジャンプをするからといって、ハエトリグモが死を望んでいるわけではありません。
ハエトリグモは、ジャンプする直前に立っているもの(木や草など)に対して糸を放ってくくりつけ、それを命綱にします。この糸の張力により、クモは体を調整してスムーズに着地することができるのです。
また、獲物に振り落とされて落ちた場合などは、この糸をよじ登って元の場所に戻ってきます。
5. クモの巣は狩りに使わない

ジャンプして簡単に獲物を捕らえることができるため、狩りに糸を使う必要がありません。
ハエトリグモは獲物を見つけると、足を伸ばしてジャンプし、小さな昆虫などに飛びかかります。種類によっては、捕らえた獲物に毒を注入して食べるのです。
しかし、最初に述べたとおりハエトリグモは多彩です。昆虫を食べない種も存在し、クモの中で唯一の草食であるバギーラ・キプリンギや、花の蜜を食べる”Evarcha culicivora”といった種がいます。
また、アメリカ南東部に生息するリーガルジャンパーは、小さなカエルやトカゲを襲って食べることが知られており、人間にも噛みつくこともあります。ただ、人体に害を与えるほどの毒はもっていないそうなので安心してください。


6. ハエトリグモのジャンプ能力は研究対象になっている
マンチェスター大学の研究者たちは、この種のジャンプ能力をよりよく理解するため、リーガルジャンパーに命令でジャンプするよう訓練をしました。そして、彼らはこのクモにキムというニックネームをつけ、彼女がジャンプする様子を撮影しました。
例えば、近距離でのジャンプの場合、キムはより速く、より低い軌道のジャンプを好みました。これは、より多くのエネルギーを消費するものの、飛行時間が短くなり、標的を捕らえる確率が高くなるためと考えられます。
このような研究をもとに、研究者らは小型ロボットのジャンプ力を向上させることができると考えています。
7. 驚異の視覚

ハエトリグモの目は奇妙な配置になっています。長方形の頭の中央には、2つの小さな目と2つの大きな目が並んでいます。
彼らはこの4つの目によって優れた視力を得ています。小さい方の目は広角の視野と運動知覚を提供し、頭の中央にある大きな主眼は細かな色彩情報を提供します。
これらによって、同じ体格の動物の中で最高の空間視能力を持っています。おまけに、クモの網膜は旋回させることができるので、頭を動かさずに周りを見渡すことができるのです。
8. 驚異の聴覚

クモは耳や鼓膜を持たないにもかかわらず、優れた聴覚を持っています。体に生えた感覚毛が音波の振動をキャッチし、クモの脳に信号を送っているのです。
クモの目を研究していた研究者たちは、2016年に偶然このことを発見しました。彼らは振動がクモのニューロンを活性化させることを実験によって確認し、たとえそれが3メートルも離れた場所から発せられた振動でも、クモは音波を感じられると結論づけました。
9. オスは歌ってメスを誘う
クモの優れた感覚器官は、狩りをしたり危険を回避したりするのに適していますが、同じように求愛の際にも役立ちます。
オスのクモはそれぞれ特別な歌を歌い、近くのメスに様々な音を送ります。その振動は地面からメスの脚に伝わり、メスの感覚毛で拾われるのです。メスがその歌に感激しない場合は、オスを食べられてしまうこともあります。
10. クジャクグモは求愛のためにダンスを踊る

オーストラリアに生息するクジャクグモは、求愛のために特別なダンスを踊ります。
オスは、まず3本目の足を振ってメスを引き付け、候補者を見つけると、振動の儀式を開始します。そして、メスの気を引いたことを確認するために、クジャクのようなカラフルな扇状の突起を点滅させるのです。この一連のプロセスは、メスの関心度にもよりますが、最大で1時間続くこともあります。
reference: 10 Wild and Crazy Facts About Jumping Spiders (treehugger.com)、Euophrys – Wikipedia、バギーラ・キプリンギ – Wikipedia、バギーラ・キプリンギ – Wikipedia、Phidippus regius – Wikipedia、Maratus volans – Wikipedia、Jumping spider – Wikipedia

あの眼で睨まれたら、動けなくなってしまいそうだぞぃ
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