オーストラリアを象徴する動物といえばカンガルーです。しかし、世界的に有名な動物であるにもかかわらず、その生態の中にはあまり知られていないことも多くあります。
ここでは、カンガルーについての不思議な10の事実をご紹介します。
1. カンガルーは色々な種類がいる
実はカンガルーにはたくさんの種類が存在します。
単にカンガルーと呼ぶ場合、カンガルー科に属する種の全体を指すことが多く、カンガルー科には大小さまざまなカンガルーが属しています。
カンガルーの代表的な種といえば、アカカンガルーです。皆さんがイメージするカンガルーに近いと思います。

他に樹上生活をするキノボリカンガルーという種類も存在します。

最近、可愛いと人気があるクアッカワラビーもカンガルー科の仲間です。

カンガルーの仲間のうち、クアッカのような小型のものをワラビー、中間のものをワラルーと呼ぶことがあります。
2. カンガルーは地球上最大の有袋類である
カンガルーが属する有袋類は、多くは胎盤がなく、子どもは非常に小さく、未熟な状態で生まれ、母親の袋の中で育ちます。また、多くの有袋類はオーストラリアに生息しています。
カンガルーは有袋類の中で最大の動物であり、その中でも最大の種がアカカンガルーとオオカンガルーです。
体長は1.6メートル以上、尾の長さは1メートル、体重は82キログラムにもなります。

3. カンガルーの多くは左利きである
人間をはじめとする霊長類には利き手があり、片方の手をもう片方よりも自然に使う傾向があります。しかし、最近の研究によって、カンガルーにも利き手があることが判明しました。
アカカンガルー、オオカンガルー、アカクビヤブワラビーの研究から、これらの動物は主に左利きで、グルーミングや食事などの作業の際、約95%で左手を使っていることがわかりました。
また、カンガルーは正確な作業には左手を、力強い作業には右手を使うなど、作業内容によって手の使い分けをしている可能性があります。このことは、手先の器用さは霊長類に特有のものだという考えを覆すもので、二足歩行への適応である可能性があると研究者は指摘しています。

4. カンガルーはモブと呼ばれる群れを形成する
カンガルーはモブと呼ばれる群れを作り、群れで移動や、採餌を行います。カンガルーの群れには数匹から数十匹の個体が含まれ、多くの場合、他の群れとの間でメンバーの入れ替わりがあるような緩い関係性であるようです。
オスは繁殖期になるとメスをめぐってキックやボクシング、噛みつきなどで争うことがあり、結果的に最も大きなオスが群れを支配する傾向があります。

5. カンガルーのなかには1.8メートルもジャンプできるものがいる
数千万年前のカンガルーは木に登って食べ物を探していていましたが、気候変動によってオーストラリア大陸の多くは砂漠化してしまいました。そこで、カンガルーは乾燥した大地で食料を探すため、エネルギー効率のよい移動手段であるホッピングを発達させたと考えられています。
アカカンガルーは時速56kmで移動することができ、地面から1.8メートルの高さまで跳びあがり、一気に8メートルも移動することができます。
6. しっぽを5本目の足として使える
カンガルーは狭い場所をゆっくり移動するとき、尻尾を5本目の足として使うことがあります。
一見不格好のようですが、アカカンガルーによる研究で、大きくて筋肉質なしっぽは、前足と後ろ足を合わせたものと同じくらいの推進力を発揮することが分かっています。
7. カンガルーの赤ちゃんは袋が空くまで休眠することがある

カンガルーの妊娠期間は約5週間で、一度の妊娠で1匹の赤ちゃんを出産します。赤ちゃんは非常に小さく、ブドウほどの大きさで、前足を使って這うようにして母親の袋(育児嚢)の中に入っていきます。
赤ちゃんはその後数ヶ月間袋の中で生活し、成長を続けます。

袋の中に赤ちゃんがいる状態で交尾を行うと、受精卵の子宮への着床を遅らせたり、生まれた子どもを休眠状態にしたりして時間調整を行います。年上の兄弟が袋を出ると、母親の体は年下の赤ちゃんに発育を再開させるためのホルモン信号を送り、成長を促します。
8. 敵を溺れさせることもある
フクロオオカミやティラコレオのような大型肉食獣が絶滅してしまった現在、オーストラリアではカンガルーの天敵はあまりいません。


しかし、カンガルーを捕食する動物は数種類知られており、タイリクオオカミの仲間のディンゴや外来種であるアカギツネ、犬、猫などが含まれます。通常は小型のカンガルーや幼い子どもがターゲットになります。

カンガルーは意外と泳ぎがうまいので、捕食者に追われると水に向かって逃げることが多いです。
そして、場合によっては追っ手を罠にはめることもあり、カンガルーは胸まで水に浸かると、振り返って捕食者と対峙し、前足で捕食者を掴んで溺れさせることがあります。
9. 赤ちゃんを生け贄にする場合がある
小型のカンガルーやワラビー、クオッカなどにとって、捕食者への反撃が必ず成功するとは限りません。場合によっては、捕食者に追われている母親が、袋から赤ちゃんを落として逃げ続けることが知られています。
ある研究によると、ワイヤートラップにかかってしまったメスのクオッカは、人間が近づいてくるのを見ると逃げようとし、その際に袋から赤ちゃんを落としてしまうことが多いといいます。(研究者たちはこれらの赤ちゃんを母親の袋に戻しました)
他のカンガルーにも同じような傾向があり、このような行動は人間には考えられないかもしれませんが、一部の動物にとっては適応的な生存戦略である可能性がある、と研究チームは指摘しています。
カンガルーの母親は人間よりもはるかに早く繁殖することができるため、その種全体の生存という観点からみれば、母親の命がかかっているときは、赤ちゃん一匹を犠牲にするのは賢明なことなのかもしれません。
10. 牛のように草を食べるが、メタンガスの排出は少ない
全てのカンガルーは草食動物で、主に草を食べますが、コケや低木、菌類も食べます。牛などの反芻動物と同じように、カンガルーも食べ物を吐き出し、それを咀嚼(そしゃく)して消化することがあります。しかし、これは消化のために必ず必要なものではなく、たまにしか行いません。
カンガルーの胃は筒状で、反芻動物の4つに分かれた胃とは大きく異なります。牛は呼吸やゲップによって温室効果ガスであるメタンを大量に排出することで有名ですが、同じような食生活をしているにもかかわらず、カンガルーのメタン発生量は反芻動物の体積比の約27%にすぎません。
カンガルーの胃の中では、乾いた草は微生物によって発酵して脂肪酸に変わり、肝臓で糖分になります。こうした能力があるため、彼らは乾燥したオーストラリア大陸でもうまく生きていくことができるのです。
reference:10 Incredible Facts About Kangaroos (treehugger.com) 、Red kangaroo – Wikipedia、カンガルー – Wikipedia、Quokka – Wikipedia、キノボリカンガルー属 – Wikipedia、Eastern grey kangaroo – Wikipedia、Red-necked wallaby – Wikipedia、Climbing adaptations, locomotory disparity and ecological convergence in ancient stem ‘kangaroos’ | Royal Society Open Science (royalsocietypublishing.org)、フクロオオカミ – Wikipedia、Thylacoleo – Wikipedia、ディンゴ – Wikipedia

ユーラシア大陸と海によって離れていることもあって、オーストラリアには変わった動物がたくさんいるのぉ
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