人魚のモデルとも言われ、ずんぐりとしたフォルムで可愛らしい見た目のジュゴン。
地球温暖化防止と一体どういった関係があるのでしょうか?
ジュゴンはインド・西太平洋の約40の国と地域に生息し、海草(海藻)だけを食べる草食性の海洋哺乳類です。
海草を食料にしているため日光が届く水深の浅い海岸周辺の暖かい水域を主な住処としています。
まずはジュゴンが海草を食べている様子を見てみましょう。


ジュゴンは視力が弱いため海草を探すのに匂いを利用しています。
海底の海草を食べるときは胸びれを使って這うように進み、柔軟で筋肉質な上唇を使って海草を掘り起こし、食べる前に少し振って砂を取り除いて食べていきます。



ジュゴンの周りには共生する魚たちが群がってきますが、ジュゴンは少しうっとおしそうに振り払っていますね。
ジュゴンは一日に約40kgの海草を食べると言われており、常に海草を刈り取ることによって健全な海草生態系が再生されていきます。
この海草の生い茂る水域は大気中の炭素を吸収して巨大な炭素吸収源として機能しているので(熱帯雨林の最大35倍の速さで大気中の炭素を取り込むことができる)、ジュゴンがたくさん海草を食べることで地球温暖化防止に貢献しているとも言えるのです。

ジュゴンは遺伝子的には象に近いんじゃ
どことなく似ているような気もするのぉ
一方、ジュゴンは生息域となる海草の生い茂る水域の減少や船舶との衝突、漁業による直接、間接的な被害などにより生息数を減らしています。
ここからはインドにおけるジュゴンの保護活動をご紹介します。
ジュゴンの生息域でもあるインドの南東部沿岸は近年、津波、暴風雨、洪水、干ばつなどの異常気象に見舞われてきました。
2004年の津波ではマングローブ林が密集していた地域では被害が少なかったことから、津波による被害を受けた海岸沿いにバイオガードとしてマングローブを植えることが広まっています。
しかし、あまり知られていないことですが、海草もこの地域の海岸保護にマングローブ同様、重要な役割を果たしていると言われています。
そのため、ここ数年インドの科学者、政府関係者、漁業関係者が一丸となって残された海草の生態系と「海草の農夫」として知られるジュゴンを保護しようとしています。



意識向上のための取り組みや、捕獲されたジュゴンを解放するためのインセンティブを提供することで、漁業者を巻き込んで保護活動を進めています。
KeezhatottamのNaguranさんは、40年にわたってバルク湾で漁を続けてきました。
「15年ほど前、私たちの地域には青々とした海草が生えていて、その周りで魚が繁殖していました。しかし今では、暴風雨の増加により海草が完全に破壊され、それに伴い魚もいなくなってしまいました。残った海草を守るためにジュゴンが重要であることを理解した私たちは、コミュニティとして、網にかかったジュゴンを放流することにしました」
彼はその後、この地域で捕獲された2頭のジュゴンを放流しました。
WII(Wildlife Institute of India – インド野生生物研究所)では、このような漁師に対して、網の補償金とジュゴンを放流した際の1万ルピーの謝礼金を支給しています。
また、WIIは「ジュゴン奨学金プログラム」を通じて沿岸部の学校の生徒たちに手を差し伸べています。
主に漁師の子どもたちを対象としたこのプログラムでは、9年生と11年生を対象とした奨学金試験を通じて、ジュゴンと海洋保護の必要性を紹介しており、彼らが地域の「ジュゴン大使」になることを期待しています。

こういった活動によってジュゴンが生息数を増やし、もっと多くの海草を育ててくれるようになるとよいのぉ
(参考)”Why India needs its fishers to save dugongs and their seagrass habitat”
“ジュゴンと海草の生息地を守るために、なぜインドには漁師が必要なのか”

メガネフクロウ教授の付け足しメモ

この投稿中に何度も出てきた海草と海藻。
同じ発音じゃがこの二つは明確に別物なんじゃ
海草と藻類である海藻はともに海域に生育するため、しばしば混同されることがある。種子植物である海草と比較して、海藻は根・茎・葉の区別がなく、一部のものにはそれらしい分化が見られるが、はっきりと異なるのは根の構造のみである。海藻の根は栄養吸収のための器官ではなく、岩に固着するためのものである(このため仮根とも呼ばれる)。
海草 – Wikipedia
コメント