トカゲのしっぽに隠された謎!逃げるときには切り離せるけど、普段落ちないのはなぜか?

爬虫類・両生類

自然界には捕食者に追われている際、体の一部を自ら切り離しておとりにする動物が存在します。こうした行動は自切(じせつ)と呼ばれています。「トカゲのしっぽ切り」という言葉もあるように、自切をする動物で最も有名なのはトカゲでしょう。

一部のトカゲの尻尾には自切面、もしくは脱離節(だつりせつ)と呼ばれる切れやすい節目があり、ここから容易に切り離すことができると一般的には認知されています。

しかし、容易に切り離せる構造でありながら、普段は尻尾が取れずにいるのはなぜなのでしょうか?この疑問に最新の研究が答えを出そうとしています。


尻尾はプラグとソケットで繋がっている

アラブ首長国連邦にあるニューヨーク大学アブダビの生体工学者で、本研究の著者であるヨンアク・ソング氏は、「ちょうどいい接続状態を保つことで、簡単に外れることはありません。絶妙なバランスなんです」と言います。

トカゲの尻尾は、ソケットに差し込むプラグのように一列につながった節で構成されており、自切する際は、自切面と呼ばれるこれらの節のどこかに沿って切り離します。各節の間は、円錐形の8つの筋肉の束でできた突起が、比較的滑らかな壁のソケットにきちんと収まるようになっています。それぞれの突起は、小さなキノコのような突起(マイクロピラー)で覆われています。

トカゲの尾の自切面と尾の中のマイクロナノ構造のクローズアップ画像
Photo: SHIJI ULLERI/WISE MONKEYS PHOTOGRAPHY

マイクロピラーとナノ穴

研究チームはこの構造の機能を明らかにするため、3種のトカゲの尻尾を優しく引っ張って切断し、切断した面を電子顕微鏡で分析しました。その結果、キノコのような突起を拡大すると、極小の穴(ナノ穴)が開いていることが判明しました。

切り離されたトカゲの尻尾(左)と顕微鏡画像
トカゲの尾には8つの円錐形の筋肉の束があり(左)、ソケットのプラグのような役割を果たしています。突起を拡大すると、ナノ穴で覆われたキノコ状の微小柱が広がっています(右)
Photo: NAVAJIT S. BABAN/NEW YORK UNIVERSITY ABU DHABI

さらに、突起のマイクロピラーがソケットの内壁に残した、指で粘土を軽く押したようなわずかな痕跡にも気が付きました。これは意外な事実で、研究者たちはキノコ状の突起(マイクロピラー)がソケットの中でマジックテープのように完全にかみ合うと予想していたのです。

亀裂の広がりを防ぐ構造

そのため、ナノ穴のあるマイクロピラーが別の役割を果たしているのではないかと考え、ポリジメチルシロキサンというゴムのような素材を使って、トカゲの尾のレプリカを作り、尻尾が分離する様子を模倣してみることにしました。これにより、切断する際に加わる力を調べることができます。結果は、マイクロピラー間の深い隙間と、表面の小さな穴が亀裂の広がりを遅らせることを発見しました。

トカゲの尾の部分の顕微鏡写真(左)とソケットの壁の拡大写真(右)
トカゲの尻尾は、突起がソケット(左上図の影のようなくぼみ)にきれいにはまり込んで連結されています。ソケットの内壁(右図)は比較的滑らかで、キノコ状の微小柱が押しつけられた跡がわずかに残っています。これは、突起がソケットの壁とマジックテープのようにかみ合ってグリップしているわけではないことを示しています。
Photo: NAVAJIT S. BABAN/NEW YORK UNIVERSITY ABU DHABI

「亀裂が入り出してから突起間の隙間に達すると、そこで亀裂は止まり、伝播するエネルギーを失います。つまり、尻尾の切断を防ぐことができるのです」とソング氏は説明します。

ナノ穴とマイクロピラーがある突起は、平らな突起に比べて15倍の接着力があることがわかりました。また、この構造は引っ張られるよりも曲げられる方が17倍も破断しやすいこともわかりました。実際、トカゲは尻尾をひねることで自切面から尻尾を切断しています。

筋肉の突起、マイクロピラー、ナノ穴の階層的な構造によって、「きつすぎず、ゆるすぎない」という”ゴルディロックスの原理※”の美しい例といえるようなバランスが実現されている、とソング氏は言います。

補足

ゴルディロックスの原理は『三匹の熊』の童話の喩えを借りて名付けられたものである。物語の中にゴルディロックスという名前の少女が登場し、三種のお粥を味見したところ、熱すぎるのも冷たすぎるのも嫌で、ちょうどよい温度のものを選ぶ。この童話が世界中でよく知られていることから、この名前を使うことで「ちょうどよい程度」という概念の理解が容易になり、他の幅広い領域にも適応されるようになった。

ゴルディロックスの原理 – Wikipedia

研究結果の利用と本来の動機

このような構造はトカゲの生存率を上げることに繋がります。自切は捕食されるのを防ぎますが、コストのかかる防衛機構であり、尻尾を失うことで尻尾にためた栄養分を失い、体の挙動や、交尾のためのアピール力などにも影響が出ます。そのため、トカゲにとって必要なときだけ尻尾を切り離せることが重要なのです。

研究者たちはトカゲの尻尾の構造を理解することで、人工装具や皮膚移植、包帯の取り付け、さらにはロボットから壊れた部品を取り外すのにも役立つかもしれないと考えています。

しかし、ソング氏によると本研究の最初の動機は別なものだったそうです。

「このプロジェクトは、完全に好奇心に基づいて行われました。私たちの周りにいるトカゲが、どうしてあんなに早く尻尾を切ってしまうのか単純に知りたかっただけなんです

本研究は、2022年2月18日付けの米科学誌『サイエンス』に掲載されました。

reference: How lizards keep detachable tails from falling off | Science NewsThe Paradox of the Lizard Tail, Solved – The New York Times (nytimes.com)How the lizard tail can remain intact normally but break off when needed – MixPointBiomimetic fracture model of lizard tail autotomy (science.org)自切 – Wikipedia

長い時間をかけ進化してきた生物の構造は、本当に考え抜かれているぞぃ

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