ゴリラは地球上で最も大きな霊長類です。テレビや映画では、攻撃的で凶暴な恐ろしい存在として描かれることもありますが、実際は知的で家族思いな動物でもあります。
今回はゴリラに関する10の事実を通して、ゴリラの本当の姿をご紹介します。
1. ゴリラにはいくつかの種類がある
ゴリラはニシゴリラとヒガシゴリラの2種4亜種(5亜種という説もあり)に分類されます。
ニシゴリラには、ニシローランドゴリラとクロスリバーゴリラの2亜種が存在し、ニシローランドゴリラは亜種の中で最も個体数が多く、野生では中央アフリカの標高の低い森林や湿地帯に約10万頭が生息しているといわれています。動物園で見られるゴリラのほとんどがこのニシローランドゴリラです。

クロスリバーゴリラは、1980年代まで詳しい調査が行われておらず、2009年になってようやくビデオに収められました。ナイジェリアとカメルーンの国境、クロス川の源流域の丘陵地帯に生息しています。
ヒガシゴリラには、マウンテンゴリラ(約1,050頭)とヒガシローランドゴリラ(4,000頭以下、1990年代の17,000頭から減少)の2亜種が含まれます。マウンテンゴリラは、ヴィルンガ火山の標高2000メートルを超える雲霧林(絶えず雲や霧のかかる場所に発達する森林)に生息しており、気温が低いため最も毛深い亜種でもあります。
ヒガシローランドゴリラはゴリラの中で最も大きく、コンゴ民主共和国東部の熱帯雨林にのみ生息しています。
以下の地図のように、それぞれの生息地ははっきりと分かれた地域にあります。

Gorilla – Wikipedia
2. ゴリラの血液型はB型しかいないというのは間違い
ゴリラの血液型に関する情報はとても複雑です。よくゴリラの血液型はB型しかいないという話を耳にしますが、これは誤りです。
「90%以上の生息数を持つニシローランドゴリラはすべてB型ですが、他の亜種ではB型以外の血液型が存在します」ということがネット上によく書かれていますが、これもゴリラを人間のABO式血液型で分類するのは適当ではないという指摘もあります。
以下のサイトには、「ゴリラにはAもBもABもないので、デフォルトではO型と考えられていました。しかし、分子レベルで見てみるとゴリラの遺伝子セグメントにはABO式とは関係のない全く別の血液型が存在することがわかりました」と記載されています。
Do great apes have the same blood groups as humans? | CBC Radio
同様に、ゴリラの遺伝情報はチンパンジー、ボノボに次いで人間に近く、95%~97%のDNAを共有しているという話があります。全くの誤りというわけではないのでしょうが、そもそも他の動物と人間のDNAの違いを塩基配列の異なる箇所を数え上げることで比較するという方法に議論の余地があるようです。
人間とチンパンジーのDNA 違いがわずか1%しかないという説は真実? – ライブドアニュース (livedoor.com)
3. ゴリラの生殖活動は人間と似ている

ゴリラのメスは約30日ごとに生理を迎え、人間と同じように1年中いつでも妊娠することができます。他の多くの動物は、季節的な発情周期があります。
ゴリラの妊娠期間は約8.5ヶ月で、生まれてくる赤ちゃんは人間と同じように非常に未熟で、母親の介抱なしにはエサを食べることも捕食者から逃げることもできません。生まれてから5ヶ月間は母親のそばを離れることはなく、数年間は授乳します。それでも、人間の子どもの約2倍の速さで成長し、10歳前後になると妊娠することができるようになります。
4. 道具を使うことができる

ニシローランドゴリラは、野生、飼育下を問わず、道具を使うことが知られています。野生のゴリラが道具を使用している姿は数回しか目撃されていませんが、それは観察しにくい森林地帯で過ごしているためであり、一部の科学者は彼らが普段から道具を使っていると予想しています。
具体的には、あるメスゴリラは水深を測るために棒を使い、あるときは深い水たまりを渡るときの杖として使用することがありました。また、丸太を使って水の上に橋をかける様子も目撃されています。
飼育下では、棒を木に投げつけて餌を落とす、棒を使って他のゴリラを威嚇する、拾った材料で雪の上を歩くスリッパを作る、丸太ではしごを作って障害物を乗り越える、などの行動が見られています。
5. シルバーバックのオスは、命がけで群れを守る

ゴリラを襲う捕食者はほとんど存在しません。ゴリラを最も多く殺しているのは人間で、証拠は少ないですがヒョウもゴリラを襲うことがあります。ヒョウの糞の中からゴリラの遺体が発見されたことがありますが、それはすでに死んでいるゴリラをヒョウが漁ったものである可能性もあります。
天敵のいないゴリラではありますが、人間や他のゴリラが群れを脅かそうとすると、リーダーである支配的なオス(シルバーバック※)が立ち上がり、侵入者に挑みます。ほとんどの場合、このような争いは咆哮や胸を叩くなどの威嚇行動で解決され、物理的な戦闘が行われることはありません。しかし、威嚇によって相手が引かない場合、シルバーバックは死ぬまで戦うことがあります。
オスのゴリラは12歳を超えて成熟すると、背中の毛が銀色に変化してきます。こうしたゴリラをシルバーバックと呼びます。
6. 個体の識別に指紋と鼻紋が使われることがある
ゴリラは人間と同じように指紋を持っており、科学者たちはゴリラを研究する際、この指紋を使ってゴリラの個体を識別します。同じように鼻紋(鼻のしわ)も生涯変化することがなく、個体ごとに異なるので、指紋と同じように利用されることがあります。
また、ゴリラは私たちと同じように親指が他の指と反対向きになっており、物を掴んで持つことができます。こうした形状を母指対向性(ぼしたいこうせい)といいます。さらに、ゴリラは人間とは違い、足の指も母指対向性のため、足でも物を操作することができます。
研究者たちは、足の指が母指対向性を持っていると二足歩行に向かないと考えていましたが、化石による証拠から初期の人類が直立歩行を始めたのは母指対向性を失う前であったことがわかっています。実際、ゴリラは移動に手を使うことが多いですが、直立歩行することも可能なのです。
7. 鋼の肉体を持っている

ゴリラの平均身長は1.2~1.8メートルで人間とさほど変わりませんが、体重は130~230キロほどで、より大きく筋肉質です。
ゴリラの大きな丸いお腹には脂肪ではなく、大きく複雑な消化器官が入っています。ゴリラは主に草食で、この消化器官によって木の類を含む植物を効率的に消化することができます。
また、ゴリラの筋肉質で広い胸は人間よりも30センチも広く、長い腕と背中にも強力な筋力を持っているため、同じ大きさの人間よりはるかに重いものを持ち上げたり、激しく叩いたりすることができます。
8. ゴリラは巣を作る
一般的に、移動と採食を繰り返す猿の仲間は巣を作りませんが、ゴリラは簡単な巣を作って日中、夜間問わずに過ごします。巣は枝や葉など、周囲にある植物を使って地面に作られますが、時には木の上に作ることもあります。

ゴリラも食べ物を求めて移動するため、そのたびに巣は作り直されますが、こうして巣を新しくすることで巣のような場所を好む害虫を避ける効果があるそうです。
9. 学習を受けたゴリラは人とコミュニケーションをとることができる
サンフランシスコ動物園で生まれたメスのニシローランドゴリラのココは、恐らく世界で最も有名なゴリラです。
ココは、幼い頃から生涯にわたってフランシーヌ・パターソン博士によって保護され、学習を受けました。その結果、1,000種類以上の手話を覚え、それらを組み合わせてコミュニケーションをとることができ、約2,000種類の言葉を理解できたと報告されています。その言語能力は人間の3歳児レベルに相当します。
しかし、パターソン博士の報告は様々な議論を呼び、彼女がココの示す無意味な手話を恣意的に解釈しているだけではないか、という指摘もありました。
現在でもその真偽について明確な結論に至ってはいませんが、他の実験においても、ゴリラは他の霊長類と同様に人間が教えた言語を学習することが報告されています。

A Conversation With Koko(YouTube)
10. 絶滅に瀕するゴリラはエボラ出血熱の犠牲になっている
ゴリラは、ニシゴリラ、ヒガシゴリラともに絶滅の危機に瀕していますが、明るい希望もあります。
マウンテンゴリラは、生息地の破壊や密猟により1989年には約600頭まで減少していましたが、熱心な保護活動によって現在では1,050頭以上にまで増加しています。
ヒガシローランドゴリラは密猟と生息地の喪失によって危機に晒されているうえ、この地域で続く内戦によって生息地であるカフジ=ビエガ国立公園のレンジャーが彼らを保護するのが難しい状況が続いています。

ニシローランドゴリラは他の亜種に比べると生息数が多いのですが、主に3つの原因によって毎年推定5%の個体数が失われています。それは、人間の食用(ブッシュミート)として殺されること、赤ちゃんゴリラが親から引き離され、ペットとして売られること、そして、ゴリラの体の一部を魔除けに使うために捕らえられることです。また、熱帯雨林の木の伐採によって生息地が減少していることも脅威となっています。
さらに近年で深刻なのは、ゴリラが人間と同じようにエボラ出血熱の犠牲になっていることです。2000年代前半にエボラ出血熱によって野生のニシローランドゴリラの全個体数の1/3が死亡したという可能性が指摘されています。
reference: 10 Thought-Provoking Gorilla Facts (treehugger.com)、Gorilla – Wikipedia、エボラ流行、絶滅危惧ゴリラに壊滅的打撃の不安 | ナショナル ジオグラフィック日本版サイト (nikkeibp.co.jp)、Koko (gorilla) – Wikipedia、Francine Patterson – Wikipedia

エボラ出血熱による被害はとても深刻じゃな
そのため、ゴリラや他の霊長類のためのワクチンが開発されているそうじゃ
コメント