カンボジアのメコン川で世界最大の淡水魚となる体長3.98m、体重約300kgの淡水エイが発見されました。
科学者は、様々な脅威に直面しているメコン川にとって、この個体が希望の兆しになると述べています。
ギネス認定の世界記録

この巨大な淡水エイは、ヒマンチュラ・チャオプラヤ(Urogymnus polylepis)と呼ばれる種で、アカエイの仲間です。2022年6月13日に地元の漁師モールトゥンさんによって捕獲され、“Wonders of the Mekong(メコン川の不思議)”プロジェクトの科学者に連絡されました。
「淡水でこのような大きさの魚を見ることができるというのは理解し難い状況で、私たちのチーム全員が唖然としたと思います」と”Wonders of the Mekong”のリーダーであるゼブ・ホーガン氏は語っています。
ボラミーと名付けられたこのエイは、防水シートを使って水から引き上げられ、工業用秤で重さを計測しました。300kgというその重さはヒグマの成獣に匹敵します。その後、行動調査のための追跡装置を取り付けられたのち、大人12人がかりで川の中へと戻されました。
実際に捕らえられたエイの様子を以下の動画で見ることができます。
今回発見されたボラミーの記録は、2005年に捕獲された293kgのメコンオオナマズが持っていた淡水魚の記録を更新するものでした。

絶滅の危機に瀕する巨大淡水魚

「世界最大の淡水魚がメコン川で捕らえられたという事実は注目に値します。ここは人口が多い地域であり、川は漁業や環境問題など様々な問題に直面しています。特に川沿いに建設されたダムは、エイを含む様々な種の産卵場所を破壊しています」とホーガン氏は述べています。
ホーガン氏によると、世界全体で巨大な淡水魚の約70パーセントが絶滅の危機に瀕しているそうです。これらの種の多くは比較的寿命が長く、成熟するまでに時間がかかるため、その成熟に達する前に捕獲されてしまうと繁殖のチャンスがなくなってしまうのです。
また、生存・成長するために広い面積を必要とするものも少なくありません。ヒマンチュラ・チャオプラヤは性的に成熟するまでに4年ほどかかり、サメなどの近縁種を含むエイの仲間としては比較的成長が遅いといえます。

「2020年、世界最大の淡水魚の候補に挙げられるシナヘラチョウザメが絶滅したと宣言されました。それはとても悲しいニュースで、記録が更新されるよりもこうした大きな魚の絶滅が増えるような気がしていました。シナヘラチョウザメも大型でゆっくりと成熟する動物が絶滅に追い込まれた例で、この種も7、8年をかけて性成熟を迎えます」
中国、ミャンマー、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナムを流れるメコン川にはいくつかの巨大淡水魚が生息しています。カンボジア北東部はエイの重要な繁殖地である可能性があり、最近この地域では今回捕獲された種を含む4匹のメスのエイが捕獲され、その中には180kgのメスのエイも含まれていたそうです。
「大型魚は世界中の淡水生態系の健全性を示す鐘のようなものです。魚は私たちにメッセージを送っているのですから、それに耳を傾ける必要があります」とホーガン氏は述べています。
reference: Stingray Found in Cambodia Sets Record for World’s Largest Freshwater Fish | Smart News| Smithsonian Magazine、Wonders of the Mekong – ホーム | Facebook、Record-breaking ray confirmed as world’s largest freshwater fish | Guinness World Records、ヒマンチュラ・チャオプラヤ – Wikipedia

こうした発見をきっかけとしてメコン川の環境改善に目が向くようになるとよいのぉ
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