ある研究者は、ミナミホリネズミが人間以外で初めて農耕を営んでいることを確認したと発表しました。彼らは土の中に掘るトンネルの中で植物の根を成長させ、それを食べて生活をしているのです。
トンネルに暮らすネズミ

ミナミホリネズミは、北アメリカおよび中央アメリカの草原に生息するネズミです。この謎めいた生物は、モグラのように土の中に長さ160mにも及ぶトンネルを掘って暮らしています。
害獣と思われがちですが、彼らは植物の根しか食べず、農作物に被害を与えることはほとんどありません。また、丈夫なトンネルは地盤を沈めることもないのです。
フロリダ大学生物学部のジャック・プッツ氏は、「彼らは全長100mを越えるトンネルの中で、たった一匹で生きています。彼らの暗く湿ったトンネルの中には植物の根が鍾乳石のように伸びていて、トンネルの壁を覆っているのです」
プッツ氏と同僚のヴェロニカ・セルデン氏は、ホリネズミが土を掘るのに必要なエネルギーをどうやって得ているのかについて頭を悩ませていました。しかし、家庭の下水管に根が伸びるという長年の問題を思い出したのです。
「もし下水管のような人工的なトンネルに根が伸びるのだとしたら、恐らくホリネズミのトンネルにも根が伸びるでしょう」
収穫した根はどれほどのエネルギーになるのか?
ホリネズミのトンネルの中では、ホリネズミの排泄物から栄養を得て植物の根が成長していきます。それでは、この根は彼らに十分なエネルギーを与えているのでしょうか?
そこで彼らは、数ヶ月をかけ、ホリネズミをトンネルに入れないようにして、トンネルの中を伸びてくる根の長さを測定することにしたのです。
最初は木や金属でトンネルの入り口を塞ごうとしましたが、ホリネズミは迂回するだけで効果はありませんでした。結局、大きなドラム缶の先を切ったものを使ってホリネズミのトンネルを囲むことにしました。これならホリネズミの侵入を360度防ぐことができます。

こうして計測した根の成長速度から、この根によってホリネズミのエネルギー需要をどの程度まかなえるのかを算出することができました。
その結果、収穫によって得た根は、彼らが必要とするエネルギー量に対して平均で21%、多い時で62%を供給していることがわかりました。
トンネルを掘るにはあまりにも多くのエネルギーが必要なので、彼らは掘削中の土の中から現れる根だけでは必要なエネルギーをまかなうことができません。しかし、すでに掘られたトンネルの中を成長する根を収穫することで、新たな餌を求めてトンネルを掘り進めるための必要なエネルギーを得ることができるのです。
これは農業?
哺乳類で農業を行う動物は知られていませんが、他の動物は確実に農業を行っています。最も有名なのは、菌類を栽培するアリでしょう。彼らは菌類の畑に種をまき、手入れをし、抗生物質で菌類を病気から守っているのです。
このアリと違い、ホリネズミは種も蒔かず、雑草も取りません。ただし、このホリネズミは作物を守り、成長を促進させる手段を講じて生き延びるための食料を収穫しています。今回の研究で明らかになったのは、「農業」の定義がはっきりしないということです。
プッツ氏は、「作物を植えること、それが農業だと考える人もいます。しかし、ある文化圏では、自分では植えていない作物を園芸技術を使って世話をしています。この問題はまだ解決されていないので、知的な面白さがあると思います」と述べています。
セルデン氏は、「ホリネズミは、人々が評価するよりもずっと興味深い存在です。彼らは本当に重要な生態系エンジニアなのです。もっと注目されてもいいはずです」と付け加えました。
この研究チームの論文は、Current Biology誌に掲載されています。
reference: Pocket Gophers are First Non-Human Mammals Known to Farm for Living | Sci-News.com、Gophers are first non-human mammal known to farm – News – University of Florida (ufl.edu)

うーん、これを農業と呼ぶのかはワシにはわからんのぉ
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