オーストラリア・クイーンズランドの町を襲う、“コウモリの竜巻”がニュースで報道されています。
街を埋め尽くす信じられない数のコウモリ。住民はコウモリによる被害に悩まされ、媒介する病原菌の心配もしなければなりません。
しかし、生物学者はオオコウモリは森林の保全に不可欠な存在であり、気候変動や生息地の減少から保護する必要がある動物であると言います。
まずは、”コウモリの竜巻”を報道するニュースで実際にその様子を見てみましょう。

家族が見上げる先には大量のコウモリが!

コウモリが飛び立つと、その重さで木の枝が折れてしまいます。

夕方になると、空一面をコウモリが覆いつくします。
“コウモリの竜巻”に悩む住民
近年、”コウモリの竜巻”(bat tornado)という言葉がオーストラリアや海外のメディアに登場するようになりました。
そのきっかけとなったのはBBCが報じたクイーンズランド州北東部のインガムという町での出来事で、この町では過去2年間でオオコウモリの個体数が爆発的に増加し、住民はその騒音と臭いに辟易しているというものでした。
また、オオコウモリは狂犬病に似た”オーストラリア・コウモリ・リッサウイルス”や、”ヘンドラウイルス”を媒介することもあります。
オーストラリア保健省は「コウモリによる人間への健康被害はほとんどない」と主張していますが、コウモリが病気を媒介するというイメージが彼らの印象をより悪いものにしています。

希少なオオコウモリが暑さにやられる
オーストラリア本土にはオオコウモリが4種生息しており、そのうち2種は国の天然記念物に指定されています。一部の町でオオコウモリが局所的に増える一方、全体としてはその数は大幅に減少しています。
近年の猛暑で一度に数千頭、時には数万頭ものコウモリが死滅しており、メディアでは極度の熱中症になって木から落ちたコウモリの死体の山が報道されています。特に森林によって守られていない街では、こうした暑さによる被害が多く発生します。
タスマニアに拠点を置くWilderness Societyの代表、マット・ブレナン氏は、「オーストラリア最大のコウモリ種に降りかかった今回の大惨事は、より大きな問題、つまりオーストラリアの森林破壊による危機の兆候です」と語っています。
「オーストラリア東部は、アマゾン、コンゴ、ボルネオなどと並んで、世界的な森林破壊のホットスポットに指定されています」

援助の手を差し伸べる
いくつかの町では彼らを支援しようとする動きがあります。
メルボルンのヤラ市議会は、ヤラ川のオオコウモリが繁殖する場所にスプリンクラーシステムを設置し、オオコウモリが涼しく過ごせるようにしています。
また、シドニーのパラマッタ川沿いでは、ニューサウスウェールズ州政府がコウモリの生息地と日陰を増やすため、木を植えるプロジェクトを支援しています。
しかし、このような善意の介入が必ずしも的を射ているとは限りません。NGO団体、Sydney BATSの会長であるティム・ピアソン氏によると、スプリンクラーは暑さで疲れた動物を驚かせ、ストレスレベルを高めてしまうそうです。
結局のところ、都市環境をコウモリが住みやすいようにすることは、コウモリが本来生息している森林を保護することに代わるものではないのです。
「オオコウモリの生息地を増やすために木を植えることはできますが、本当の問題は気候変動と継続的な森林破壊です」とピアソン氏は言います。
コウモリには森が、森にはコウモリが必要です
オオコウモリが木の喪失に苦しむ一方で、オオコウモリの喪失は木にとっても悪い影響を与えます。
オオコウモリが花に頭を突っ込んで花蜜を吸ったり、果実を食べて種を排出したりすることは、ユーカリやメラルーカ、バンクシアなど、多くの植物の繁殖を助けているのです。
ピアソン氏は、もし私たちが気候変動に対処し、森林破壊を止めなければ、オーストラリアのオオコウモリの数は今後数十年以内に激減し、この重要な役割を果たすことができなくなるだろうと警告しています。
翼のある隣人を愛することを学ぶ
ピアソン氏はオオコウモリを最も熱心に支援しています。
彼はオオコウモリの鳴き声を研究しており、人間が苦情を言う彼らの騒音は、実は知的で強い社会性を持つ種の高度なコミュニケーションであると言います。
彼は、一般の人々がオオコウモリを病気を媒介する厄介者として見るのをやめ、オオコウモリという特別な動物を評価するようになることを望んでいます。
「人々を教育し、オオコウモリが生態系の健全性にとっていかに重要であるかを認識してもらうことで、オオコウモリを救うことができるかもしれません」

参考:Flying foxes: Australia′s love-hate relationship with fruit bats | Global Ideas | DW | 07.01.2021

とんでもない数のコウモリじゃったな
それなのに保護する必要があるとは…、なかなか複雑な問題じゃ
この記事は、2022年2月26日に投稿した内容を修正・再投稿したものです。
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