コノハチョウは枯れ葉に擬態する蝶です。この蝶の羽の模様は、環境などによって様々なパターンが見られますが、この多様性はいかにして生まれたものなのでしょうか?
枯れ葉に擬態する蝶

コノハチョウは不思議な擬態をする蝶です。東アジアや東南アジアに生息し、日本の沖縄にも生息しています。
羽を広げた状態で見える表面は鮮やかなオレンジや青色をしていますが、羽根を閉じると見えるくすんだ茶色の裏面は、まるで枯れ葉のようです。

どうでしょうか?模様や葉脈まで完全に枯葉を再現しており、一見では見分けがつかないほどです。これまで、この驚くべき擬態がどのようにして生み出されたのか、詳しくわかっていませんでした。
理想的なモデル
今回、研究者たちはこの蝶が枯れ葉に似る現象の遺伝的仕組みを解明し、『Cell』誌に発表しました。
研究は、コノハチョウが生息するいくつかの島を対象として行われ、低地や山地など様々な場所で採取した蝶を用いることで、できるだけ多くのパターンの葉の類似性を調査しました。そして、どのような進化を辿り、この多様な擬態のパターンが生まれたのかを解明します。
中国・北京大学で蝶の研究をしているウェイ・チャン氏は、「蝶の羽は比較的単純な構造をしていますが、この単純な構造が、運動、体温調節、交尾の好み、捕食者の回避など、非常に複雑な機能を担っています。そのため、蝶の羽は、動物の進化に関する様々な疑問を解決するための理想的なモデルだと思います」と述べています。
cortex遺伝子

研究者達は、初めにコノハチョウが属するタテハチョウ科の21属105匹の蝶のゲノムを配列決定しました。その結果、コノハチョウ属は単系統群を形成しており、同科の他の属の蝶とは遺伝的に異なることが明らかになりました。
次に、各地で採集したコノハチョウ属のチョウ36匹のゲノムを解析することで、コノハチョウの進化の歴史を明らかにしました。この蝶は更新世(約258万年前から約1万年前まで)にヒマラヤ山脈の東部で多様化し、その後、アジアの他の地域や、現在では島になっている地域にも分散していったことがわかりました。
そして、羽の模様が異なる78個体のゲノムを解読した結果、全部で10種類の異なる羽の模様が見つかり、それらは”cortex遺伝子”と呼ばれる5つの対立遺伝子の組み合わせによって決定されている可能性が高いことがわかりました。この”cortex遺伝子”は、蝶や蛾の羽や体色を制御することで知られています。
この5つの対立遺伝子は、研究者らが「plain(プレーン)」、「veined(葉脈)」、「scrambled(スクランブル)」、「rippled(波紋)」、「moldy(カビ)」と呼んでいる羽の裏側の模様に関連しています。
選択圧
ニュートンの提唱した進化論では、このような表現型の変異パターンが集団内に存在する場合、その環境に適応したパターンを持つ個体の生存確率が高まることで、遺伝的な選択が行われていくと考えられています。今回のコノハチョウのケースで言えば、その環境に存在する枯れ葉により近い個体は捕食者から逃れる可能性が高くなり、長い時間をかけ、そのパターンが選択されていくということです。
研究チームは、コノハチョウは何百万年もの間、枯れ葉に姿を似せることで身を守ってきたこと、そして現在見られるさまざまな羽の模様は、選択圧の結果であることを解明しました。
現在では、環境の違いによって10種類の枯れ葉のパターンが維持されており、バランス的な多様性が見られる状態になっています。今後は、地域や群生する植物の違いにより、羽の色や模様がどのように変化するかを調査する予定です。
reference: How do oakleaf butterflies mimic dead leaves? • Earth.com

なるほどのぉ
その地域の枯れ葉に近い模様が選択されていったんじゃな
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