花の蜜を吸って生きる蝶には、美しい、華麗、おとなしいというイメージがありますが、主に北米大陸に生息するオオカバマダラという蝶は少し違います。
まず、この蝶には毒があります。彼らが幼虫のときに好んで食べるミルクウィード(トウワタ)という葉には毒が含まれており、その毒素を体内に溜め込んでいるのです。そのため、捕食者である鳥がこの蝶を食べても、苦しんだのちに吐き出してしまいます。
さらに新しい研究によると、この蝶の幼虫はミルクウィードの葉をめぐって仲間たちと喧嘩するというのです。
幼虫の喧嘩

フロリダ・アトランティック大学の生物学者たちは、オオカバマダラの幼虫は大好物のミルクウィードの葉が少なくなってくると、おとなしい性格から一転、他の幼虫に頭をぶつけたり、突進したりして、餌を取り合うようになると学術誌iScienceに発表しました。
この論文の著者の一人であるアレックス・キーン氏は、この研究は偶然生まれたものだと語っています。
「私の妻が、裏庭で2匹のオオカバマダラの幼虫が喧嘩していると言ったんです。YouTubeを見てみると、こうした行動を撮影した動画がありました。しかし、この行動は科学文献のどこにも記録されていなかったんです」
生存競争のための攻撃

この行動を詳しく観察するため、研究者たちは4匹のオオカバマダラの幼虫を様々な量のミルクウィードの葉を入れた実験皿に入れてみました。その結果、餌の量が攻撃性に影響を与えることを発見したのです。
共著者であるエリザベス・ブラウン氏は、次のように述べています。
「餌が少ないほど、彼らの攻撃性のレベルは高くなります。普段はただ歩きまわって食べているだけですが、他の幼虫が美味しそうなものを食べているのを見つけると、後ずさりして体ごと突進するのです」

このような餌の奪い合いは、幼虫が蝶へと変態するためのエネルギーを蓄える必要があることに起因している可能性があります。
ほとんどのオオカバマダラの幼虫はミルクウィードの葉しか食べることができないため、生まれた周辺にある葉が唯一の食料源となります。そのため、他の幼虫と一緒に食べていると、成虫になるのに必要な量を確保できない可能性があり、より多くの葉を確保するためにライバルを蹴落とすことができれば、それは彼らにとって有利に働きます。
ブラウン氏は、幼虫が最も攻撃的になるのは蛹(さなぎ)への変態が近い時期であり、「それはおそらく彼らが最も食物を必要としている時期です」と述べています。
また、同種間の争いにおいては体の大きさが物を言うことが多々ありますが、この幼虫の社会でも同様のことが言えます。「幼虫には明らかに勝ち組と負け組があります。それは、概ね体の大きさに比例します」
こうした行動は他の種でも起こっているのか?
研究チームは、オオカバマダラの幼虫が限られた餌のために引き起こす攻撃性は、他のさまざまな種にも存在する可能性があると考えています。
キーン氏は、「今回の研究で、幼虫が限られた餌に対して攻撃的に反応することがわかりましたが、これらの幼虫の脳が、このような反応を引き起こす要因についてさらに詳しく調べたいと考えています。これは、より複雑な生物における同様の行動のメカニズムを調べるという意味でも重要になります」
また、幼虫時により攻撃的であった個体が、より攻撃的な成虫に成長するかについても調査するかもしれないとも述べています。
reference: Monarch Caterpillars Butt Heads Over Milkweed | Smart News| Smithsonian Magazine、Monarch butterfly – Wikipedia

自然界では常に生存競争が繰り広げられているわけじゃから、蝶の幼虫がこんな行動をとっても不思議ではない気もするのぉ
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