ダチョウは世界最大の飛べない鳥です。
長い足と丸い体に不釣り合いなほど小さな頭。その姿は鳥類の祖先とも言われる、かつて地球上に生息していた恐竜を連想させます。一説には「ジュラシックワールド」の制作過程で、恐竜の動きを再現するためにダチョウの走り方を参考にしたそうです。
しかし、彼らがユニークなのはその大きさや見た目だけではありません。砂漠やサバンナでの厳しい環境に適応したすごい能力を持っているのです。今回は、ダチョウの魅力的な事実を10個ご紹介します。
1. 世界一大きな鳥
先述のとおり、ダチョウは世界で一番大きな鳥です。メスよりもオスのほうが一回り大きく、最大で体長2.8m、体重145kgにもなります。
二番目に大きな鳥は、体長で言えばエミュー、体重ではヒクイドリですが、ダチョウには及びません。必然と言えるかもしれませんが、この3種の鳥はいずれも飛べない鳥です。


また、体の大きさだけでなく、卵の大きさも現存する鳥類の中で最大です。ダチョウの卵は厚く光沢のあるクリーム色の殻で、直径は約15センチ、重さは3キロにもなります。しかし、これでも大人の体重との比率でいえば鳥類の中では最小クラスです。
この大きな卵は食べると一個で2,000キロカロリーもあるそうで、これは標準的な成人女性が一日に必要とするカロリーに匹敵します。

ダチョウの卵の孵化期間は35~45日程度ですが、この短い期間にもかかわらず、生き残って無事に孵化できるのは10%以下と言われています。
2. アフリカ大陸に住んでいる

前述のエミューやヒクイドリなどのように、オーストラリアとニュージーランドには多くの飛べない鳥が生息しています。また、オーストラリアでは多くのダチョウが牧畜されており、その中で逃げ出した個体が野生で群れを作っています。
そのため時々勘違いされますが、ダチョウはオセアニアではなく、本来はアフリカ大陸のサバンナや砂漠に住む鳥です。かつてはサハラ砂漠よりも北、現在のアラビア半島やトルコにも生息していました。
3. ダチョウは2種類いる

これまでダチョウは、いくつかの亜種を含んだ1種とされていましたが、亜種とされていたソマリアダチョウ(学名:Struthio molybdophanes)をDNA解析した結果、亜種の中で最も遺伝情報が異なっていることが判明しました。そのため、2014年にソマリアダチョウは別な種として同定されました。
この鳥は、ソマリア、エチオピア、ケニア、ジプチなど、いわゆる「アフリカの角」と呼ばれる地域に生息しており、特徴は何と言っても首と足の青みがかった色です。特に繁殖期のオスは鮮やかな青色になります。
4. ダチョウの目は大きくてよく見える

ダチョウは視力が非常に良く、鳥類だけでなく、動物の中で最も良いと言われています。なんと42.5メートル離れた場所から、アリが移動している様子がはっきりと見えるそうです。
また、目の大きさも鳥類No.1で、直径が約5cmとビリヤードボールほどの大きさがあります。また、重さも一つが60グラムもあり、これは40グラムの脳よりも重いことになります。
5. 砂漠に適応した長いまつ毛
ダチョウが生息する砂漠や乾燥した地帯では、砂嵐がたびたび発生します。もし砂が目に入ってしまえば、武器ともいえる優れた視力を一時的に失うことになり、場合によっては致命的な結果をもたらすこともあります。
そのため、ダチョウには太く、長いまつ毛があり、こうしたリスクを抑える役割を果たしているのです。
6. 時速70キロで走ることができる

ダチョウは筋肉質の長い足を使い、時速70キロ以上のスピードで走ることができます。
一般的な鳥の指は3~4本ですが、ダチョウの足には2本しか指がありません。こうした適応は馬などでも見られるもので、1本の指が蹄の役割を果たし、踵を地面に付けることなく走ることで、とてつもない速さを生み出します。

また、ダチョウの翼は舵としての役割を果たしており、旋回したり、ジグザグに走るとき、翼でバランスを取っています。
7. ダチョウの武器は強烈なキック
ダチョウの長い足は速く走るためだけでなく、捕食者を撃退するための武器としても使われます。
同じサバンナに住むヌーやシマウマなどの4本足の哺乳類は、通常後ろ足で蹴り上げますが、ダチョウはバランスを保つために前足で蹴ります。その威力は強力で、人間やライオンが重傷を負ったり、時には死んでしまうこともあるそうです。
8. 消化を助けるために石を飲む
ダチョウは概ね草食で、主に種子や草、低木、果物、花などを食べていますが、時折、ヘビやトカゲなどの小型の爬虫類やげっ歯類を食べることもあります。
ダチョウには歯がないため、石や砂などを飲みこむことで胃の中で食べ物をすり潰し、消化を助けています。これはいわゆる胃石と呼ばれるもので、ダチョウが飲みこむ石は大きいもので10cmを越えることもあるそうです。
9. サバンナで生き残る飛べない鳥

先の話題でも触れましたが、現在、ニュージーランドには最も多くの飛べない鳥の種が生息しています。これは、ニュージーランドで多くの鳥類がそのような進化を遂げたと言うよりも、天敵となる哺乳類がほとんど生息していなかったことが理由として挙げられます。
実際、マダガスカル沖の島に生息していたドードーという飛べない鳥は、人間が持ち込んだ哺乳類によって100年足らずで絶滅してしまいましたし、現在、オセアニアの多くの飛べない鳥も外来種の哺乳類によって絶滅の危機に瀕しています。
ある研究によると、人間がいなければ(外来種を持ち込まなければ)、今の4倍の飛べない鳥の種が生息していたはずだといいます。飛べない鳥はそれほど脆弱な存在なのですが、ダチョウは多くの大型捕食獣が住むサバンナで堂々と生き残っています。ある地域を除き、ライオンがダチョウを狩りの標的にすることはめったに無いそうです。
これは、ダチョウには動物一の視力と高い警戒心、そして、驚くようなスピードと捕食者にとって危険な蹴りという武器があるためだと考えられます。
10. ダチョウは砂に頭を埋めない
日本ではあまり聞きなじみがない話ですが、海外ではダチョウは危険が迫ると砂の中に頭を突っ込む習慣があると信じる人たちがいます。そのため、危険が迫っているのに現実逃避をしている人を差して、「彼はダチョウのように頭を隠している」というような言い回しがされるようになりました。

しかし、ダチョウにこうした習性はありません。これは、ダチョウが卵を砂の中に産み、それを1日に何度も回転させている様子や、地面に生えた餌を食べているのを見た人が、砂の中に頭を入れているように誤解したものだと思われます。
ただし、捕食者から狙われていると感じたとき、頭を低く下げて見つかりにくくするという行動はとることがあります。
reference: 11 Compelling Ostrich Facts (treehugger.com)、14 Flightless Facts About Ostriches | Mental Floss、Ostrich | National Geographic、Common ostrich – Wikipedia、、On Your Toes | AMNH、人間がいなければ「飛べない鳥」が世界には今の4倍はいたとの研究結果 – GIGAZINE、飛べない鳥 – Wikipedia

一部では頭が悪いと言われているダチョウじゃが、すごい能力がたくさんあるんじゃ!
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