スプリングボックは、アフリカ南部に生息するインパラやガゼルに似た草食動物です。シカのようにも見えますが、生物分類上はシカよりはウシに近いです。
南アフリカ共和国ラグビー代表のシンボルとして知られ、代表チームは「スプリングボクス」と呼ばれています。
特徴は何と言っても驚異的なジャンプ力です。ここからは、スプリングボックという動物をより深く知るための10の事実を見ていきましょう。
1. 名前の由来
スプリングボックという名前は、アフリカーンス語で「ジャンプ(スプリング)」と「アンテロープ※(ボック)」を意味する2つの言葉に由来します。アフリカーンス語は、17世紀から18世紀にかけて南アフリカに入植したオランダ人が使っていたオランダ語から派生した言語です。
※アンテロープ…アフリカおよびアジア南西部に生息する、枝分かれしない角を持つウシ科の偶蹄類の総称。インパラ、ガゼル、スプリングボックなどが含まれます。

スプリングボックの学名は”Antidorcas marsupialis”で、antiはギリシャ語で「反対」、dorcasは「ガゼル」を意味し、この動物がガゼルではないことを示しています。また、marsupialisはラテン語のmarsupium(ポケット)に由来します。
普段は、尾から背中の真ん中にかけての皮膚がポケットのように折りたたまれていますが、興奮すると開いて白い毛が見えるようになります。実際、この特徴がスプリングボックとガゼルを見分けるポイントでもあります。

2. 実は砂漠にも住んでいる

スプリングボックは、南アフリカ西部、ナミビア、ボツワナ、アンゴラ南西部に生息しています。サバンナのような草原地帯に生息しているイメージがありますが、実はカラハリ砂漠やナミブ砂漠にも生息しています。
渇きに強い動物で、食料とする草から得られる水分だけで生存することができます。
3. 茶色のほかに白と黒の亜種がいる

スプリングボックの大きさは、肩の高さが80cmほど、体重は27〜45kgくらいです。オスとメスの外見は似ていますが、オスの方が少し体格が大きい傾向があります。
35~50cmほどの角は、オス・メス関わらず生えています。この角はケラチン(髪の毛や爪と同じ物質)でできていて、シカと違って生涯抜けることはありません。
また、スプリングボックには体色が白と黒の亜種が存在します。


4. 時速80キロを超える速さで走ることができる
スプリングボックはサバンナでも優れたランナーと言えます。
最高時速は88km/hほどですが、短距離ではチーターに、長距離ではリカオンに追いつかれてしまいます。それでも、後に説明するプロンキングなどを駆使し、捕食者から必死に逃げるのです。
6. 捕食者と脅威
成体のスプリングボックは、ライオン、チーター、ヒョウ、ハイエナ、リカオンなどの大型肉食獣に捕食されます。幼い個体は、ワシなどの大型の鳥に連れ去られることがあります。
人間も大きな天敵であり、肉や毛皮を目的とした狩猟や、スポーツハンティングのターゲットになります。また、大量の群れが農作物を荒らすため、害獣として無差別に駆除された時代もありましたが、現在では保護区の設定や狩猟のライセンス制などにより保護されています。
7. プロンキング
まずはスプリングボックがジャンプする様子をご覧ください。

どうでしょうか?すごい跳躍力です!これがスプリングボックの一番の特徴と言えるでしょう。
このような大きなジャンプはプロンキングと呼ばれ、最大で高さ3.3メートルまで跳ぶことができます。なぜこのような行動をとるかはよくわかっていませんが、一般的な説は、スプリングボックが仲間に対して警戒を促しているか、近くにいる捕食者の気をそらそうとしている、というものです。
いずれにせよ、足の速さや跳躍力に自信のあるスプリングボックが時間を稼ぐことにより、他の仲間が逃げるための時間を確保しているのです。
8. オスはメスをめぐって争う

オスは発情期になると10万~70万平方メートルの縄張りを作り、尿や糞でマーキングをします。 隣り合った縄張りのオスとは、メスを賭けて頻繁に争いあい、角を使って押し合いをしますが、時には刺すような攻撃になることもあります。
メスは異なるオスのテリトリーを歩き回って交尾の相手を探します。発情期以外ではオスとメスは混合の群れ(ハーレム)を作り、その数は数百頭にもなります。独身者のオスだけの群れもありますが、通常は50頭以下です。
9. 生息数が増加している
現在、アフリカには150万から250万頭のスプリングボックが生息していると推定されており、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストにおいても、最も絶滅の懸念の少ない種に位置づけられています。
19世紀から20世紀にかけて個体数が減少しましたが、積極的な保護活動と南アフリカ国内での人気によって個体数は増加に転じています。
10. 南アフリカラグビー代表の愛称

スプリングボックは、20世紀初頭から南アフリカラグビー代表チームと政府の重要なシンボルになりました。そのため、このシンボルは人種隔離政策、いわゆるアパルトヘイトの歴史とも強く結びつくことになり、1990年代初頭にアパルトヘイト政権が崩壊すると、このシンボルを廃止すべきという論争の的になります。
しかし、白人が中心と言われるラグビーファンへの配慮を考えたネルソン・マンデラは、この動物の名前を残すよう介入したと言われています。そのかいあって、現在でも南アフリカラグビー代表は「スプリングボクス」という愛称で呼ばれています。

スプリングボックは南アフリカの国獣になっておるぞ
ラグビー代表と同様、国民に愛されておるんじゃ
この記事は、2022年2月7日に投稿した内容を修正・再投稿したものです。
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