ウミガメは極地を除くほとんどの海に生息しています。その名のとおり、生涯のほとんどを海中で過ごしますが、メスは産卵のときのみ砂浜に上陸して卵を産み、砂に産めて海に戻ります。
ウミガメの産卵地の一つであるアメリカ・フロリダ州では、最近、子ガメのほとんどがメスになっているそうです。それはなぜでしょうか?
フロリダで孵化するウミガメにオスがいなくなった


フロリダには、アカウミガメ(学名:Caretta caretta)やアオウミガメ(学名:Chelonia mydas)など5種類のウミガメが生息しています。しかし、フロリダキーズ※にあるタートルホスピタルのマネージャー、ベット・ジルケルバック氏によると、この場所では4年の間、オスのウミガメが発見されていないそうです。
※フロリダキーズとは、フロリダ半島南端に伸びる細長い列島のことで、半島からほぼ南西端に位置するキー・ウェストまで道路(セブンマイル・ブリッジ)が通じています。
ウミガメの性別の決定には温度が大きな役割を果たしています。孵化時の温度が高いほど、より多くのメスが生まれるのです。
アメリカ海洋大気庁(NOAA)によると、昨今の気候変動によってウミガメが営巣する砂の温度が上昇しているため、孵化した子ガメはメスに偏ってしまうそうです。このままウミガメの性比がメスに偏り過ぎてしまうと、種全体の繁殖能力が低下し、局所的な絶滅の危険性が高まるかもしれません。
こうした性比の偏りは、フロリダ州だけで発生しているわけではありません。2018年に学術誌『Current Biology』に掲載された研究では、オーストラリアにあるアオウミガメの営巣地での性比について言及しています。温暖なグレートバリアリーフ北部では99%、涼しい南部のダウンアンダーでは65~69%がメスに偏っていると報告されています。
温度依存型性決定

性比の極端な偏りは、ウミガメの繁殖能力に影響を及ぼす可能性がありますが、メスが多いことは必ずしも不自然というわけではありません。
90%がメスに偏る営巣地は珍しいものではなく、集団の中にほんの数匹のオスがいれば卵を受精させるのに十分であるという指摘もあります。しかし、フロリダのようにオスが全くいなくなってしまえば、受精することは不可能です。
アメリカ海洋大気庁によれば、ウミガメの性別を決定する基準温度は摂氏27.7℃であり、27.7℃以下で孵化したウミガメはオス、それ以上でメスになります。卵が孵化する時期にこの閾値を跨いで温度が上下することで、オスとメスが混在することになります。
こうした温度依存の性決定は、魚類やワニ、トカゲなどでも見られます。なぜ一部の動物でこのような方法が採用されているのかについて、科学者たちは確かな結論を導き出してはいませんが、ある程度根拠のある説はあるといいます。
メキシコ国立自治大学の生物学者ディエゴ・コルテス氏は、「私たちの最善の推測では、爬虫類の卵は親が世話をしておらず、卵の孵化が環境と密接に相互作用しているためと考えられています。また、卵の温度上昇が胚の発生を早めることもわかっており、より高い孵化温度で生まれる性別は、より早く孵化することになります」と述べています。
こうした性決定方法は、群れの中でより多くのオスやメスが必要な場合に、母ガメが涼しい場所や暖かい場所に卵を産むことで子供の性をコントロールすることを可能にするかもしれません。
孵化温度上昇がもたらす別な問題

2020年に『Climatic Change』誌に掲載されたアカウミガメの研究は、孵化温度の上昇がもたらす別の問題の可能性を指摘しています。
大西洋に浮かぶ島々からなるカーボベルデという国では、ウミガメの卵の孵化温度が32.3℃に達すると、29.7℃前後の場合に比べ、卵の胚が死滅してしまう割合が33%上昇することがわかりました。また、高温で孵化した子ガメはサイズが小さく、海へ向かう途中でカニに食べられてしまう可能性も上昇するそうです。
つまり、孵化温度の異常な上昇は、ウミガメの子供が無事に海までたどり着ける確率を低下させる可能性があるということです。このまま地球の温暖化が続いた場合、ウミガメに限らず、温度依存型性決定をする種は、絶滅の危機に追いやられるかもしれません。
reference: Most of Florida’s newly-hatched sea turtles are female. Why? | Live Science

やはり地球の生態系は、絶妙なバランスの上に成り立っているんじゃな
気候変動はそのバランスを崩してしまう可能性があるんじゃ
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