2018年、カナダで嗜好品としての大麻が合法化され、アメリカでも大麻を合法化する州が増えています。しかし、大麻の解禁は人間だけの問題ではないかもしれません。
研究者たちは、アメリカとカナダの獣医師に聞き取りを行い、動物の大麻中毒の症例数を調査しました。その結果、ペットの大麻中毒の症例が増加傾向にあることがわかったのです。
ペットの大麻中毒の報告
2018年、カルフォルニア州の女性医師がペットの大麻中毒についてFacebookに投稿しています。
彼女が食料品店で買い物をして帰宅すると、いつもは騒がしい3歳のラブラドール・レトリバーのヘイゼルの様子がおかしいことに気が付きました。
「彼女はソファの上にいました。彼女の頭は垂れ下がり、体を持ち上げることができません。私はテニスボールを出しましたが、彼女は無視しました。いつもはテニスボールを出すと夢中になるはずなんです」
やがて、ヘイゼルは震え始め、体を起こすことも目を開けていることもできなくなり、失禁しました。
「ヘイゼルはなんらかの中毒か、それとも脳卒中なのかと思いました」
すぐに救急動物病院へ連れていくと、看護師はすぐに何が起こったかのかわかったようでした。看護士は、「これは大麻中毒のようです。いつも見ていることです」と彼女に告げました。獣医によると、週に10件も発生しているとのことでした。
尿検査の結果、やはりTHC(大麻成分)が検出されました。彼女はヘイゼルが散歩中に誤って大麻を食べてしまったと考えており、Facebookの投稿の中で、ペットを守るためにマリファナを適切に保管し、廃棄するよう訴えています。
獣医師に対する聞き取り調査

カナダ・ゲルフ大学オンタリオ獣医カレッジのリチャード・クアンサ・アミサ氏らのグループは、ペットの大麻中毒の実態を調査しました。
過去の報告により、ペットが大麻中毒になるケースが増加していることが示唆されていましたが、実態については詳しくわかっていませんでした。そこでアミサ氏らは、2021年にアメリカ、カナダに拠点を置く251人の獣医師に、動物の大麻中毒に関していくつかの質問調査を行いました。
その結果、アメリカ、カナダともペットの大麻中毒が増加傾向にあり、特にカナダでは2018年の合法化以降、大幅に増加したと結論づけました。これは、実際に中毒の事例が増えただけでなく、合法化されたことで正直に報告しやすくなったとも考えられます。
原因と症例
大麻中毒の報告が最も多かった動物は犬で、次いで猫、他にはイグアナ、フェレット、オウム、馬などでも症例がありました。中毒の主な原因は、吸い殻や乾燥大麻などの誤飲によるものですが、最近増えている大麻成分入りのグミなども原因になっているようです。これらは一見すると普通のお菓子と見分けがつきません。

また、犬や猫などのペットは私たち人間よりも体が小さく、体の仕組みも異なるため、大麻中毒は想定外の深刻な結果をもたらす可能性があります。大麻中毒に陥った動物の一般的な症状は、方向感覚の喪失、無気力、揺れなどの異常な動きや協調性のなさ、心拍数の低下、尿失禁などが報告されています。
報告された283例のうち、ほとんどの動物は回復しましたが16匹は死亡しました。しかし、死亡に至る他の原因を排除できないため、大麻中毒によるものかはわかっていません。
研究の意義

現在までのところ、タバコなどに比べて大きな危険があるとは言えませんが、これからも増加するであろう事案であるため、研究の重要性はより一層高まっています。
調査を行ったアミサ氏は、「これ(ペットの大麻中毒)は、カナダやアメリカの複数の州で最近大麻が合法化されたことから、研究すべき重要なテーマと言えます。ペットの大麻中毒の根底にあるメカニズムを理解し、その治療法を開発するためには、まず、それがどのようなものか理解する必要があります。これは我々がこの調査で達成したかったことで、今回の結果は、このあまり研究されていないテーマについて指針を示すことになると信じています」と述べています。
reference: Cannabis poisoning in pets is on the rise • Earth.com、More dogs being poisoned by marijuana, vets say (nbcnews.com)

ペットと飼い主は密接な関係があるから、飼い主の変化はペットにも大きな影響を与えるんじゃ
日本でも大麻解禁の話題が出ることがあるが、ペットへの影響という面もぜひ検討して欲しいところじゃな
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