ワラジムシ(この投稿内では広義のワラジムシ亜目を指します)は、ダンゴムシやフナムシ、それに便所虫などとも呼ばれる狭義のワラジムシを含む等脚目のグループです。その多くが名前に”ムシ”と付けられていますが、実際は昆虫ではなく、エビやカニなどに近い甲殻類に属しています。
世界中に広く分布しており、今回砂漠に生息するワラジムシに関する新しい研究で、この生物の面白い生態が明らかになりました。
彼らは同類交配と呼ばれる性質を持っており、オスが交配相手のメスを選ぶ際、優先選択権のある体の大きなオスは大きなメスを選ぶと言われています。しかし、その選択にはメスが作った巣の場所も考慮され、危険な場所に巣を作ったメスを避けていることがわかりました。


砂漠に住むワラジムシ
砂漠に住むワラジムシの寿命はわずか1年ほどで、その間に1度だけ交尾をします。彼らは一夫一妻制で、交尾の後、メスが地面に掘った巣穴の中で60〜70匹の子供と一緒に暮らします。両親は幼い子供たちの世話をし、家族全員で巣穴を掘り続けて巣を大きくしていきます。

ワラジムシは種類多く、今回研究の対象になったのが具体的にどの種かは不明です。
先述のとおり、彼らは同類交配をしています。これは交配相手の選択の際、似たような特性を持つ相手を選ぶ交配パターンのことで、例えば年齢が近い相手を選ぶことなどが挙げられます。体の大きさに関する同類交配の場合、体の大きなオスはオス同士の戦いに勝利する確率が高く、交配相手として生殖能力の高い体の大きなメスが優先的に選択されます。結果として、体の大きなもの同士が交配し、一夫一妻制であれば残った体の小さいもの同士も交配することになります。
このワラジムシにおいてもまさにこのような現象が起こるのですが、エルサレムにあるヘブライ大学の研究者たちは、危険な場所に巣穴を持つ大きなメスは、オスにあまり好まれないのではないかと考えました。
サソリによる捕食リスク

彼らはイスラエル南部のネゲブ砂漠で、ワラジムシを捕食する危険なイスラエルゴールドスコーピオンの巣穴の近い場所と、安全な距離にある場所で、ワラジムシたちの交配の様子を観察しました。
その結果、危険な場所にある巣では、大型のオスはメスをめぐってあまり熱心に競争しないことがわかりました。また、メスのワラジムシたちは全体としてサソリの巣から遠い安全な場所に巣穴を作る傾向があり、その危険を十分に予測できていると考えられます。
「この結果は、捕食者に対する恐怖心が、生物の個体群の動態や進化過程にどのような影響を及ぼすかを予測する上で極めて重要です。この野外実験において、砂漠のワラジムシはサソリの捕食リスクにさらされてもサイズの同類交配を維持していましたが、(この地域の)メスを選んで争うオスは、平均的に小さくなることがわかりました」と、研究を主導した研究者の一人であるViraj Torsekar氏は述べています。
具体的には、小型のオスは捕食リスクを受け入れ、サソリの近くにいる小型のメスと一緒に行動し、中型のオスは安全な場所にいる小型のメスと、危険な場所にいる大型のメスのどちらかを選んでいることが明らかになりました。つまり、捕食のリスクは交配相手として魅力的であるかどうかの判断材料の一部になっているのです。
この研究の詳細は、『Ecology』誌に掲載されています。
reference: Scared Woodlice Settle For Second-Rate Mates (nocamels.com)、The secret love lives of woodlice • Earth.com、Hemilepistus reaumuri – Wikipedia、同類交配 – Wikipedia

自分の遺伝子が残る確率を上げるため、動物たちの繁殖戦略はとても巧妙なんじゃな
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