トゲマウスは剥がれ易い皮膚を犠牲に捕食者から逃れ、驚異的な速さで再生させる

その他哺乳類

サンショウウオやトカゲなど、体の一部を失ってもそれを再生する能力を持つ動物は数多く存在します。しかし、哺乳類の回復能力は他の種に比べると非常に限定的です。そんな中でも、これからご紹介する一部のトビマウスは、哺乳類でありながら驚異的な回復能力を持ち合わせています。

この小さなネズミは、捕食者に掴まると皮膚が簡単に剥がれ落ち、それを犠牲にして逃げてしまいます。まるでトカゲのしっぽ切りのようですが、このネズミは失った皮膚を驚くような速さで回復させることができるのです。


体の一部を回復させる能力を持つ動物たちについては、以下の投稿にまとめてありますので、併せてご覧ください。

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小さなネズミが持つ特殊な能力

ケンプトゲマウス(左)とパーシバルトゲマウス(右)

トゲマウスは背中にハリネズミのトゲのような短く硬い毛が生えているため、このような名前が付けられました。(トゲネズミという別な種も存在するため注意が必要です)

その中でも、アフリカのサバンナに生息するケンプトゲマウス(Acomys kempi)とパーシバルトゲマウス(Acomys percivali)という二種は、皮膚が非常に弱く、捕まると激しくもがき、あっという間に皮膚が剥がれ落ちてしまいます。その結果、最大で60%もの背中の皮膚を失ってしまうこともあるのです。

米国・フロリダ大学のアシュレイ・セイファート氏らのグループは、このネズミの皮膚の特性に注目し、研究を行いました。この結果は「nature」誌に掲載されています。

剥がれやすい皮膚の理由

研究の結果、セイファート氏らのグループはこれらのトゲマウスの皮膚がすぐに剥がれてしまう理由を突き止めました。彼らの皮膚は、表面的には一般的なハツカネズミの皮膚と似ていますが、毛が生えるための毛包(毛を生産する皮膚の器官で表面部分は毛穴と呼ばれる)とそれに付随する腺の割合が圧倒的に多いのです。

その結果、皮膚を体に結合させる組織が少なくなり、小さな力でも簡単に皮膚が破れてしまいます。一方、ハツカネズミの皮膚は約20倍の強度があり、77倍ものエネルギーを吸収することができます。

トゲマウスがこの特性によって負うことになる皮膚の損傷は、ほとんどの哺乳類にとって致命的なはずです。研究グループは、これらのネズミの免疫システムについてさらに研究し、その秘密を探っているところです。

その中で彼らは、トゲマウスが非常に高い治癒力で皮膚を再生させることを確認しています。傷口はすぐにかさぶたになって出血が止まり、1日で64パーセントも縮小します。さらに、一般的なラットが傷口を新しい皮膚で完全に覆うのに5〜7日かかるのに対し、トゲマウスはたった3日で覆ってしまうのです。

また、他の哺乳類が新しいコラーゲン繊維を密に張り巡らせて皮膚を再生させるのに対し、トゲマウスは元の組織と同じように緩い密度でコラーゲン繊維を覆っていきます。その結果、傷跡のない皮膚の再生が可能になっているようです。

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耳にあけた穴の再生

さらに、これらのトゲマウスは耳にできた比較的大きな穴も塞ぐことができます。このような傷は、創傷治癒を研究する科学者がよく使う傷の一種であり、まさにピアスの穴のようなものを指しています。人間でも大きなピアスの穴は完全にふさがらなくことがありますが、ウサギを除くほとんどの哺乳類でも同様です。

しかし、トゲマウスは耳の穴を治すだけでなく、皮膚、毛包、脂肪細胞、筋肉、軟骨などのさまざまな層を再生させることができます。数週間もすれば耳は完全な状態となり、傷跡も残りません。

四肢を再生できることで有名なサンショウウオは、足を失うと断面に線維芽細胞が集まって再生芽が作られます。再生芽は、生物が胚(多細胞生物の初期段階)から成長する過程のように四肢を再構成させることができるのです。セイファート氏らは、トゲマウスも同じように傷を治癒させていることを発見しました。トゲマウスの耳を刺すと、サンショウウオのように再生芽が形成されているのです。

人間への応用

セイファート氏は、トゲマウスの能力が人間に応用できるのではないかと考えています。

この事実(トゲマウスの再生能力)は、哺乳類における再生が、これまで考えられていたよりも手の届かないものではないことを示唆しています。例えば、人間の指の再生には再生芽の形成と維持が大きなハードルの1つとなっています」

人間にも再生芽を作る能力は存在していますが非常に時間がかかるため、その間に傷口がかさぶたに覆われてしまうことによって再生することができないのです。

「トゲマウスの耳組織の再生の例から、どのようにすれば哺乳類でも再生芽を形成されるようになるかを理解できるようになればと考えています」

もし、この再生プロセスの初期段階がうまくいくようになれば、人間が本来持っている再生能力が自然と発揮され、指を再生させるかもしれません。

「人間への応用に関しては、現状は待つしかないでしょう」

一方、生物学者が注目する典型的な「モデル動物」以外にも目を向けることがいかに重要であるかを、このトゲマウスが示してくれているとセイファート氏は感じているそうです。

動物の再生能力を研究する分野では、サンショウウオやイモリなどの両生類や扁形動物(へんけいどうぶつ。プラナリアなど)がモデル動物として注目されます。それは、これらの動物が高い再生能力を持っているだけでなく、扱いやすく便利であるという理由からです。しかし、哺乳類であるトゲマウスは、人間から遠い関係にあるモデル動物にはできない、人間の医学分野への重要な手がかりを与えてくれるかもしれません。


reference: Spiny mice defend themselves with self-flaying skin and fast healing factors (nationalgeographic.com)Spiny mouse – Wikipedia失われた手足を再生する – 日経サイエンス (nikkei-science.com)

なぜこのネズミだけがこのような能力を進化させたんじゃろうか

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