卵を守るため、有益な細菌を利用する甲虫。彼らは世代を超えて細菌を受け継いでいる

生物学

微生物は動物に病気をもたらすこともありますが、多くは有用であり、生存のために欠かせない存在と言えます。ラグリア属の甲虫は、産み落とした卵を守るため、共生細菌を巧妙に利用しています。

しかし、一つ問題があります。彼らは、卵~幼虫~サナギ~成虫へと完全変態を遂げる過程で組織が再編成されるため、通常であれば有益な共生細菌を置き去りにしてしまうはずです。新しい研究は、この甲虫がどのようにして細菌を維持しているかを明らかにしました。

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卵を守る共生細菌

ラグリア属のラグリア・ヒルタ(学名:Lagria hirta
幼虫が細菌を住まわせるポケットを持つことが発見された最初の種。

ラグリア属はゴミムシダマシ科に属する甲虫の仲間です。この種のメスは、湿度の高い土の中や落ち葉の下に卵を産みます。そこには病原性菌類なども潜んでおり、何も対処しなければ卵や幼虫が生き残る確率は低くなってしまいます。

しかし、メスは卵管近くの分泌腺に数種類の共生細菌を持っており、産卵の際に細菌を絞り出して卵の表面をコーティングするのです。これらの細菌は数種類の抗生物質を生産し、卵や幼虫を有害な菌類の侵入から守ってくれます。実際、この共生細菌を持たない卵が病原性の糸状菌によって死滅させられることが確認されています。

ここまでの事実は、先行研究によって明らかにされていたことです。20世紀初頭には、ラグリア属の幼虫が背中に3つのポケットを持っており、そこに共生細菌を飼っていることが見つかり、それから100年ほど後、産卵時に細菌を絞り出していることもわかりました。幼虫やサナギにこのようなポケットを持つものは、他の昆虫では知られていません。

© Rebekka Janke

しかし、これまで甲虫が、卵~幼虫~サナギの段階を経ていながら、卵を産むメスの生殖器に共生細菌が存在する仕組みは分かっていませんでした。今回、ドイツとデンマークの生物学者らによる研究によって、その謎が解き明かされました。その結果をまとめた論文は、『Frontiers in Physiology』誌に掲載されています。

研究対象

今回研究対象となったのは、ラグリア・ビローサ(学名:Lagria villosa)という種です。もともとアフリカ起源の種ですが、1970年代に恐らく人間の活動によって南米大陸に侵入すると、強力な外来種として勢力を拡げ続けています。彼らの南米での成功は、共生細菌のシステムが支えているのかもしれません。

この種の共生細菌の最大の構成要素は、”Lv-StB”と呼ばれるバークホルデリア属の細菌ですが、運動するための遺伝子と構造を失っており、おそらく甲虫の外では長くは生存できません。そのため、甲虫から何らかの方法で栄養をもらっている可能性が高いと考えられています。

デンマークにあるコペンハーゲン大学の研究者で、論文の著者であるラウラ・V・フロレス氏は、次のようにと述べています。

「今回、甲虫が変態する際に体の構造が大きく変化するにもかかわらず、有益な共生細菌を維持できる方法を明らかにしました。彼らは、背中にあるユニークなポケットを修正することによって、蛹化(ようか。幼虫からサナギへの変態)の間も共生細菌を維持し、さらに新しく発達した成体器官への移動も容易にすることに成功しているのです」

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共生細菌が成虫へ受け継がれる仕組み

© Rebekka Janke

研究者たちは、サナギから幼虫へと変態する際、どのように細菌を移動させているかを調べるため、幅わずか1.0μmの極小蛍光ビーズをサナギの表面に散布してその様子を観察しました。

まず、ラグリア・ビローサのメスのサナギは、共生細菌を背中のポケット内に収容しています(左図)。脱皮の際、皮は中央の脱皮線に沿って分かれ、中から成虫が出てきますが、摩擦によって成虫の背中に共生細菌が拡がっていきます(中央図)。そして、完全に脱出するときには細菌は腹部の先端にまで達するのです(右図)。

ちなみに、オスのサナギのポケットはほとんど機能しておらず、共生細菌はほとんど存在しないことがわかっています。これは、オスは産卵する役割を持たないため、この共生細菌を蓄えておく必要がないためと考えられています。また、腹部に付着した共生生物が、メスの副腺に定着する仕組みは今のところわかっていません。

研究共著者であるマーティン・カルテンポス氏は、この研究の今後の課題について次のように述べています。

「有益な共生生物が世代を超えてどのように伝達・維持されるのかをよりよく理解するためには、定着を制御する宿主と共生生物の因子を明らかにする必要があります。例えば、宿主は特定の共生細菌を選択しているのでしょうか?また、どのようなメカニズムで動かない共生細菌が生殖器官に住み着くのでしょうか?」

この甲虫と共生細菌の関係の全容を明らかにするには、継続した研究が必要なようです。


reference: Beetles have “backpacks” to protect their eggs • Earth.comSymbiotic bacteria protect beetle larvae from pathogens | Max Planck Institute for Chemical Ecology (mpg.de)

自然界にはたくさんの共生関係が存在しておるが、昆虫の世代や変態をまたいで細菌が受け継がれていくというのは、なんとも面白い話じゃったな

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