犬は飼い主の感情を把握することができます。飼い主が怒っていれば反省や恐怖の態度を示し、悲しんでいれば慰めようとします。
犬は表情や声などから感情を読み取っていると考えられますが、新しい研究によると、ストレスには匂いがあり、犬はそれを嗅ぎ分けることができると言います。
ストレスの匂い

Photo: Clara Wilson
北アイルランドにあるクイーンズ大学ベルファストの心理学者クララ・ウィルソン氏は、犬が人間のストレスを検知できるかを研究し、結果をまとめた論文を『PLOS ONE』誌に投稿しました。
ウィルソン氏は、「私たちの体の心理的ストレス反応は、息や汗の匂いを変化させます。犬はこの変化を察知することができるのです」と述べています。
研究グループが行った実験には、4匹の犬(トレオ、フィンガル、スート、ウィニー)とボランティアの36人が参加しました。参加者には難しい数学の問題を解いてもらい、その前後で汗と呼気のサンプルを採取しました。
参加者は問題を解く前と後で自分が感じたストレスレベルを自己申告し、血圧と心拍数の上昇がみられたものをストレス状態にあるサンプルとします。
こうして得られたサンプルを使い、犬の嗅ぎ分けテストを行いました。犬には事前にストレスのある匂いをを嗅ぎ分ける方法を教えてあり、その上で次の3つのサンプルの匂いを嗅がせました。
- 普通のガーゼ
- ストレスを受けていないときの匂いを付けたガーゼ
- ストレスを受けているときの匂いを付けたガーゼ


Photo: Clara Wilson
結果は、全体の正解率が93.8%、4匹全員がストレスの匂いが付いたサンプルを嗅ぎ分けることができました。
犬の嗅覚

今回の実験は小規模なものでしたが、この結果は、ストレスを感じている人は普段とは異なる匂いを発している可能性があることを示唆しています。少なくとも、犬の非常に敏感な鼻はそれを嗅ぎ分けることができたのです。
犬の嗅覚がどれほど優れているかについては諸説ありますが(匂いの種類によって左右される)、少なくとも人間の数千~数万倍の能力があると考えられています。
そのため、犬は匂いを検知する様々な場面で使われており、麻薬や爆弾だけでなく、最近では医療分野でも活躍を見せています。人間の血糖値の変化や”がん”、コロナウイルスまで嗅ぎ分けることができるのです。
鼻を使って世界を”見る”
今回の結果について、ウィルソン氏は次のように説明しています。
「犬は視覚や聴覚を必要とせず、人間のストレスを察知することができるのです。こうした研究は初めてのものであり、介助犬やセラピー犬の訓練に役立つと考えられます」

今回の実験に参加したトレオ(2歳のアメリカン・コッカースパニエル)の飼い主は、「トレオが研究に参加したことを嬉しく思い、また興味深く思いました。毎週、トレオを迎えに行くたびに結果を聞くのが楽しみでした。彼もクイーンズ大学の研究者に会うのをいつもとても楽しみにしていて、研究室への道を覚えていたんです。
この研究は、犬が鼻を使って世界を”見る”能力について、私たちに気づきを与えてくれました。今回の訓練を通じて、トレオは家庭でも感情の変化を感じ取る能力を身につけたと思います。犬は非常に敏感で直感的な動物であり、彼らが最も得意とする嗅覚の活用に大きな価値があることを、この研究は私たちに強く印象付けてくれました」
reference: Dogs Can Smell When You’re Stressed Out | Smart News| Smithsonian Magazine、Featured Research | Stress has an odour and dogs can smell it – new research | News | Queen’s University Belfast (qub.ac.uk)、Stress has an odor and dogs can smell it — N | EurekAlert!

嗅覚という分野では、現在でも犬の嗅覚を上回るような性能の検出装置は造ることができていないそうじゃぞ
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