オシドリは世界で最も美しい鳥のひとつと言われています。思わず目を奪われるような色とりどりの羽はまるで絵画のようです。
しかし、この鳥の魅力は派手な体色だけではありません。意外なほど地味なメスや、日本やアジア圏における文化的な意義など、今回はオシドリに関する興味深い事実をご紹介します。
1. オシドリのメスは地味

オシドリは赤いクチバシにカラフルな体色が目を引きますが、それはオスだけのものです。こうした特性はオシドリに限ったことではなく、他の多くの鳥類もオスだけが派手な外見をしています。これこそがメスを惹きつけるための彼らの武器なのです。
その反面、オシドリのメスはとても地味な色合いで、羽の色は茶色やグレーでクチバシもそれに合わせています。特徴を挙げるとすると、目を囲んで後ろに伸びる白い模様は独特のものと言えるでしょう。
2. 換羽期を迎えたオスは地味になる

先述のとおり、派手な体色はメスを惹きつけるためのものです。しかし、目立つことは捕食者から狙われるリスクを増加させます。そのため、オシドリは他の水鳥と同じように、繁殖期を終えると換羽期(かんうき)と呼ばれる羽の生え替わり時期を迎えます。
この時期に生え変わる羽はメスと同じような色をしています。もともとこちらがオシドリの本当の姿と言えるかもしれません。この時期にオスとメスを見分ける場合は、オスの特徴である赤いクチバシに注目しましょう。
また繁殖期が近づいてくると、オスは派手な色の羽に生え替わります。
3. 日本を含む東アジア原産の鳥

オシドリはカモ科の渡り鳥で、日本、中国、韓国、ロシア東部などに生息しています。日本では、暖かい季節に北海道や本州北部地域で繁殖し、冬が来ると西日本へ南下します。
生息地の減少によってアジア圏における個体数は減少しているようですが、近年はヨーロッパ各地やアメリカにも生息域を広げているため、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは「軽度懸念種」に分類されています。
4. 人間によって欧米に生息域を拡げている
先述のとおり、オシドリは東アジアから欧米へと生息域を拡大していますが、これは自然発生的に起こっているわけではありません。18世紀半ば、その美しい外見に魅力を感じた人々がペットとしてイギリスへと輸入しました。
しかし、野生のオシドリが繁殖するようになったのは1930年代になってからで、ペットとして飼われていた個体が敷地外へと逃げ出したことがきっかけとされています。1980年代には、イギリス国内におけるオシドリの生息数は約7,000羽と推定されました。
アメリカでは、ノースカロライナ州やカリフォルニア州などで野生の個体が確認されており、こちらも個人の飼育下から逃げ出した数羽が野生で繁殖した結果と考えられています。2018年10月、ニューヨークのセントラルパークに1羽のオスのオシドリが現れて話題となりましたが、どのような経緯でたどり着いたのかはわかっていません。
5. オシドリは愛と貞節のシンボル

日本では、「おしどり夫婦」と言われるように、オシドリは仲睦まじい夫婦の象徴とされています。一夫一婦で生涯を添い遂げると考えられており、中国や韓国でも愛と貞操のシンボルになっています。
中国では新婚の夫婦にオシドリをデザインした二つセットの品を贈る風習があり、風水でも夫婦仲を円満にするためにオシドリの置物などが利用されることが多いようです。
しかし、近年の研究によると、オシドリは毎年違うパートナーを選んでいることが判明しており、オスは子育てに協力することもありません。実は、彼らはあまり良い夫婦のお手本とは言えないようです。
6. 求愛の儀式
オシドリのオスはカラフルな羽でメスを惹きつけますが、カップルになるためにはさらなる努力が必要です。オシドリは他の多くの鳥類と同じように変わった求愛行動をとります。
繁殖期を迎えたオスは、頭を振りながら水を飲んだり、前かがみになって羽を広げてメスに必死のアピールをします。また、オシドリはカモに比べると普段は静かな鳥ですが、求愛行動のときには特殊な鳴き方をすることがあります。
7. オシドリの子育て

先述のとおり、一夫一婦制でありながら、オシドリのオスは子育てにほとんど参加しません。オスは28〜33日の卵の抱卵期間中はそばにいますが、卵が孵化すると去っていきます。母鳥は9羽から12羽のヒナたちを一人で育てることになるのです。
その間、オスは繁殖期用の羽を脱ぎ捨て、冬季の移動に備えています。
8. ヒナに訪れる最初の試練
母鳥は地上から10~15メートルくらいの高さの木のくぼみに卵を産みますが、孵化したばかりのヒナたちはすぐに水場へ行く必要があります。
彼らはまだ飛ぶことができませんが、母鳥に促され、木のくぼみから地面へと決死のジャンプをするのです。多くの場合、草や落ち葉がクッションとなり、ヒナは無事に水場へと移動することができます。

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9. オシドリは美味しくない
オシドリは食べてもあまりおいしくないようです。彼らは主に水生植物を食べますが、他に昆虫や貝類、時にはカタツムリやネズミ、魚の卵まで食べることもあるそうです。
そのため、オシドリの身からは泥臭い匂いがすると言われており、その不味さは彼らが東アジアで生き残った要因の一つに挙げられるほどです。
reference:8 Colorful Facts About Mandarin Ducks (treehugger.com)、12 Facts About Mandarin Ducks | Mental Floss

絵具で色付けしたようなカラフルな羽根が美しいのぉ
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