世界初、中国でホッキョクオオカミのクローンが誕生する

イヌ

中国で世界初のホッキョクオオカミのクローンが誕生しました。代理母になったのは、なんと小さなビーグル犬です。

今回クローン化を行った中国企業は、その目的を絶滅危惧種の保護としています。クローン化の主体が大学から民間企業に移ったことで、様々な種のクローンが作られるようになっています。

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クローンホッキョクオオカミ

クローン技術によって生まれたホッキョクオオカミのマヤ
Photo: Sinogene Biotechnology Co.

2022年9月19日、北京にあるSinogene Biotechnology社が記者会見を開き、マヤと名付けられたメスのクローンホッキョクオオカミと代理母のビーグル犬が映った動画を世界に向けて公開しました。

同社によるとマヤが生まれたのは6月10日で、誕生から100日後に動画の公開を行ったとのことです。また、2匹目のホッキョクオオカミのクローンが9月22日に誕生する予定であることも明らかにしました。

Sinogene社は普段は個人顧客のために犬や猫、馬などの亡くなったペットのクローン作製を行っています。2019年には、6頭の同じジャーマンシェパードのクローンを製造し、北京警察に入隊させるプロジェクトにも関与していたそうです。

しかし、今後はその専門性を生かし、絶滅危惧種の保護を目的としたクローン作製に協力したいとしています。

体細胞核移植

代理母とマヤ
Photo: Sinogene Biotechnology Co.

マヤは、中国北東部にある動物園「ハルビン・ポーラーランド(哈爾浜極地館)」で飼育されていたホッキョクオオカミのクローンです。このオリジナルのホッキョクオオカミの名前もマヤで、カナダで生まれた後、2006年に中国へ移されましたが2021年初めに老衰で亡くなったといいます。

Sinogene社のミ・ジドン氏は、マヤのクローン化は「2年間の苦心の末に成功した」と、記者会見で述べていました。

今回使われた技術は『体細胞核移植(SCNT)』と呼ばれるもので、未授精卵へ体細胞核(クローン元)を移植してクローン個体を作ります。誕生した個体は代理母の遺伝情報は受け継がず、クローン元の個体と全く同じ遺伝情報を持ちます。

彼らは、オリジナルのマヤから採取した皮膚細胞から体細胞核移植を行い、137頭分のホッキョクオオカミの胚を作りました。そのうち85個の胚を7頭のビーグル犬の子宮に移植しましたが、妊娠をして完全に発育したのはわずか1頭だけだったのです。

生まれたばかりのマヤ
Photo: Sinogene Biotechnology Co.

研究者たちがビーグル犬で代理出産を行ったのは、飼育されているメスのホッキョクオオカミが十分に確保できなかったからです。幸いなことに、犬とホッキョクオオカミは遺伝情報に十分な一致度があったため、代理出産は成功しました。

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絶滅危惧種のクローン化

マヤは現在、中国東部の徐州にあるSinogene社の研究所で代理母と一緒に暮らしていますが、いずれはハルビン・ポーラーランドに移され、他のホッキョクオオカミと一緒に暮らす予定とのことです。

また、同社は北京野生動物園と新たに提携し、今後、同園で飼育している種のクローンを作成することを発表しましたが、具体的なプロジェクト内容はまだ発表されていません。

同社はクローン製造の理由を絶滅危惧種の保護としていましたが、 国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストではホッキョクオオカミは『低危険種』に指定されており、絶滅の危機に瀕している状態とまでは言えないでしょう。

しかし、本当の絶滅危惧種が研究者によってクローン化された事例もあります。

2020年、米国に拠点を置く非営利自然保護団体『Revive & Restore』の研究者が、レッドリストで『野生絶滅』とされていたクロアシイタチ(学名:Mustela nigripes)のクローン化に成功しました。

同年には、一時絶滅とされていたモウコノウマ(学名:Equus przewalskii)のクローン化にも成功し、現在はすでに絶滅したとされるリョコウバト(学名:Ectopistes migratorius)の復活を試みています。

クローン化のメリット

『Revive & Restore』の主任研究者であるベン・ノバック氏は、「将来的には、(クローン技術は)絶滅危惧種や絶滅に至った種のための命綱になる可能性があります」と述べています。彼は、絶滅危惧種のクローンを作る最大のメリットは、種内の遺伝的多様性を維持できることだといいます。

絶対的な生息数が少なくなってくると近縁による交配が進み、集団内の個体が持つ遺伝情報が偏っていきます。すると、病気や気候の変化などの外的要因に対して生き残れるものが現れず、絶滅の道を進むしかなくなってしまうのです。

クローン化のもう一つのメリットは、既存の飼育下繁殖プログラムと併用できることです。特に他の種の代理母が使用できる場合は、妊娠可能な母親の数を増やすことができます。

「哺乳類における代理妊娠を成功させる条件は、2つの種が500万年前に共通の祖先を持つことであるようです」とノバック氏は言います。

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現在のクローン技術における問題点

ただし、今のところクローン化技術にも問題はあります。

その一つは、まだすべての動物種でクローン化に成功しているわけではないということです。現在までに体細胞核移植を使ってクローン化されたのは、哺乳類、魚類、両生類、そして昆虫1種だけとのことです。鳥類や爬虫類、そしてカモノハシやハリモグラのような卵を産む哺乳類では、卵が正しく発育しないためこの技術はうまくいっていないようです。

また、体細胞核移植は人工授精や体外受精に比べると成功率が非常に低いことも問題です。マヤの例でもわかるように、一頭のクローンを作るために何百もの胚や、複数の代理母を用意しなければなりません。これがクローン化技術を高価なものにしています。

そのため、Sinogene社のような民間企業の出現は、クローン技術の発展においては重要な役割を果たすと考えられています。なぜなら、これまでのクローン研究は資金の乏しい大学などを中心に行われてきたためです。

クローン擁護派にとっては、マヤの誕生はこの分野の研究における新たな一歩となったでしょう。ノバック氏はクローン技術による野生動物の保護について、次のように述べています。

「野生動物のクローン研究がさらに進むのは素晴らしいことです。近年の目覚ましい成果により、クローン技術が野生動物保護のための有益なツールであることを世界に示してくれることを願っています」


reference: World’s first wolf clone born to surrogate dog, Chinese company reveals | Live Science

倫理的な問題については絶えず議論になるじゃろうが、一度成功し始めればこの流れはもう止まらんじゃろうな

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