ニシキヘビは、時に牛や鹿など自分よりも大きな動物を捕食することがあります。彼らは獲物に噛みつくと、全身を相手に巻き付けて締め殺し、そのあとゆっくりと丸飲みにしてしまいます。そして、強力な胃酸(ほぼ純粋な塩酸)で消化してしまうのです。
彼らはなぜそのような大きな獲物を飲みこむことができるのでしょうか?
ニシキヘビとは?

ニシキヘビという名前はニシキヘビ科に属するヘビの総称です。ニシキヘビ科のヘビに毒はありませんが、他の科のヘビに比べて大型であり、最大種であるオオアナコンダやアメニシキヘビは最大で体長が9.9m、体重は100kg以上にもなります。
しかし、彼らの体格が大きいことだけが大きな獲物を飲みこむことができる理由というわけではありません。
こちらの動画には、アフリカニシキヘビがインパラを飲みこんでいる様子が映されています。明らかに自分よりも大きな相手ですが、口がありえないほど大きく開き、少しずつ飲みこんでいく様子が確認できます。
学術誌『Integrative Organismal Biology』に投稿された論文によれば、彼らが獲物を食べることができるかどうかの基準は、自分の口がどれだけ開くかという点にあるようです。また、なぜニシキヘビの口があれほど大きく開くことができるのかについても明らかにしています。
外来種のビルマニシキヘビで実験

米国・シンシナティ大学の生物学者たちは、安楽死させた43匹のビルマニシキヘビ(学名:Python bivittatus)がどこまで口を開けることができるのかを実験しました。
使用したビルマニシキヘビは、フロリダ州・エバーグレーズに生息していた個体です。
本来ニシキヘビはアメリカ大陸には生息していませんが、外来種としてこの地に入り込んだビルマニシキヘビは爆発的に生息数を増やしています。そして、大きく開く口で何でも食べてしまうので、鹿やアライグマ、オポッサムなどの在来種の生息数を減少に追い込んでいると考えられているのです。
そのため、地元政府や民間団体などが協力してビルマニシキヘビの駆除に努めており、実験ではこの駆除された個体が使用されました。
●関連記事
ヘビのアゴに隠された秘密

実験の結果、最も大きく口を開けられたのは体長4.3m、体重63.3kgの個体で、最大で直径22cmの物が入りました。研究者は、最大で直径30cm以上の物が入るほど大きく開く個体もいるのでは、とコメントしています。
一部では、ヘビは獲物を飲み込むためにアゴを脱臼させていると信じられていますが、これは誤りです。ヘビは人間とは異なり、アゴの骨が左右二つに分かれています。また、ヘビの頭蓋骨とアゴを繋いでいる結合組織には高い伸縮性があり、これが伸びることで大きく口を開くことができるのです。

Photo: Ian Bartoszek
さらに、ヘビが獲物を咥えた後、胃袋へと送り込むための秘密もあります。
人間の歯は横一列に並んでいますが、ヘビにはこの横一列の歯の他に、縦一列に並んだ歯があります。この歯を前後にくねらせることで、獲物を少しずつ飲みこんでいくことができるのです。
他のヘビも大きく口が開くのか?
今回の実験では、すべての種類のヘビがビルマニシキヘビのように大きく口を開けられるわけではないことも判明しました。

比較対象となったのは、普段、鳥やトカゲ、小さな齧歯類などを食べているブラウンツリースネーク(学名:Boiga irregularis)というヘビです。ナミヘビ科に属しており、弱い毒を持っています。
体長がほとんど同じ個体を比較したところ、ブラウンツリースネークが咥えることができる直径はビルマニシキヘビとは比べ物にならないほど小さかったのです。

Photo: Bruce Jayne
実際、ブラウンツリースネークのほうがかなり細長い体をしてはいますが、この差は体格の違いだけでは説明が付きません。
また、論文の著者であるブルース・ジェイン氏は、ニシキヘビが大きく口を開けるからといって、食事がすべて大型の哺乳類になるわけではないと言います。実は、ウサギやキツネ、アライグマなど、小型の哺乳類を食べることのほうが多いのです。
「ヘビは獲物を噛み砕くのではなく丸呑みにするため、解剖学的に食べられる量に上限があります。実際には、(相手が大きすぎると)獲物を捕獲して飲み込むことが困難な場合が非常に多いのです」
●関連記事
reference: Jaw-dropping study reveals how pythons can devour super-size prey | Live Science、This is how pythons can devour enormous prey (thefranklinnewspost.com)、

考えられんほど大きく開くんじゃな
コメント