夏場に窓を開けていると、不意に耳元でプーンという蚊の羽音が聞こえてきます。夏の風物詩と言えなくもないですが、私たちは反射的に頭を揺らし、手で頭の周りを振り払います。
それにしても、なぜ蚊は耳元に集まってくるのでしょうか?私たち人間への嫌がらせでしょうか?
耳元で聞こえる音

蚊の嫌な羽音が耳元から聞こえる理由の一つは、彼らの羽音の周波数が高いためです。
音は空気が波のように振動することで伝わりますが、その周波数※が高いほど高音になり、低いほど低音になります。
周波数は、波が単位時間あたりに繰り返す振動の数であり、Hz(ヘルツ)という単位は、1秒間あたりの振動数を表します。
また、高音ほど遠くまで音が届かないという特性があります。これは、高い周波数ほどより多く空気を震わせており、音が遠くに届く前にエネルギーを失ってしまうためです。
蚊のプーンという羽音は(比較的)高音で、小さな蚊の羽が作り出す元の音も小さいため、耳の近くに来たときにしか聞こえないのです。
余談ですが、メスの蚊が羽ばたく音は450〜500Hzで、オーケストラがチューニングする際に基準とする音”ラ(A)”に近いとされています。
オスの蚊の羽音はもう少し高音で、交尾相手を探すオスはメスの羽音を聞き分けることができます。そのため、オスの蚊を入れたカゴの近くでラの音を出すと、メスを探そうと必死に動き回るそうです。同じことをしてもメスは反応を見せません。
二酸化炭素

蚊が頭の周りに集まるもう一つの理由は、私たちが呼吸によって二酸化炭素を吐き出しているためです。
私たちが聞くプーンという音のほとんどは、メスの蚊によるものです。 なぜなら、吸血性の蚊はオスとメスで全く違う生活をしているからです。
オスの蚊は花の蜜を吸うだけで、人間の血を吸うことはありません。しかし、メスは卵を産むための十分なエネルギーを得るため、血を吸う必要があるのです。
また、メスの蚊は二酸化炭素を頼りにターゲットを探しています。そのため、口や鼻から多くの二酸化炭素を出している顔付近には蚊が集まってきやすいのです。
蚊が好んで血を吸いたくなる人の特徴は?

よく血液型がO型の人は蚊に血を吸われやすいという話がありますが本当でしょうか?
蚊がターゲット探すときは、まず二酸化炭素濃度の濃い場所を探し、その後体温を頼りに獲物の肌に降り立ちます。そして、足にある味覚センサーで、その獲物の血がおいしそうかどうかを判断しているのです。
しかし、血液型の違いによって変化する血中物質の中で、蚊を引き寄せる効果のある成分は確認されておらず、血液型によって蚊の好みが分かれるという説は生物学の世界では否定的とされています。それよりも、他の要素の方が刺されやすさに関連性が見られるようです。
まず、女性よりは男性のほうが蚊に刺されやすというデータがあります。また、よく言われるように、黒い服も刺されやすい要素になるようです。黒い色はより熱を吸収しやすく、温度を頼りに獲物を探す蚊を引き付けやすいと考えられます。

他には、1996年に『Trends in Parasitology』誌に発表された論文によると、マラリアを媒介するハマダラカのメスは、人間の足に住むある細菌に引き寄せられることがわかりました。
その細菌はブレビバクテリウム・リネンといい、足の臭い匂いの原因になっています。また、この細菌はベルギー発祥のリンバーガーというチーズの発酵にも使われています。
そのため、2013年に『PLOS One』誌に掲載された論文では、蚊が実際にリンバーガーチーズに引き寄せられることが確認されています。

つまり、蚊は私たちの足元にも集まっているはずなのですが、実際には羽音が聞こえないため気が付いていないだけなのです。
reference: Why do mosquitoes buzz in our ears? | Live Science、カ – Wikipedia

夏になったら、足をよく洗ったほうが良いかもしれんのぉ
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