私たち人間を含む全ての生物は遺伝子を持っており、それが何らかの働きをすることで生物としての形が作られている、というのはなんとなく皆さんご存知だと思います。
しかし、染色体、DNA、ゲノム、遺伝子といった用語をきちんと説明できる方は少ないのではないでしょうか?
そこで今回は、これらの用語の解説、遺伝子の働き、遺伝子操作の活用についてご説明したいと思います。
この投稿は、以下の動画を元に説明を追加して作成しています。
染色体、DNA、ゲノム、遺伝子とは?

私たち人間を含む全ての生物は、たくさんの細胞が集まってできています。(単細胞生物もいますが…)
細胞の中には核(細胞核)と呼ばれる器官があり、その中に染色体があります。染色体はらせん状に2本セットになっており、私たち人間であれば染色体の数は23対46本です。
染色体の数は必ずしも高度な生物ほど多いというわけではなく、チンパンジーなどの類人猿は48本、鯉は100本あります。
この染色体を構成しているのが、ヒストンと呼ばれるたんぱく質とデオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid)、いわゆるDNAという物質です。

そして、DNAはヌクレオチドという分子が繋がってできており、ヌクレオチドには塩基の違いによるバリエーションがあります。DNAを構成する塩基は、A(アデニン)、G(グアニン)、T(チミン)、C(シトシン)の4種です。

このA、G、T、Cの塩基を持つヌクレオチドの配列(塩基の順番や長さ)こそが生物を構成するための設計図であり、DNAの持つ設計図全体をゲノムと呼び、そのうち生物の体(タンパク質)の設計図にあたる部分を遺伝子と呼びます。
ゲノムと遺伝子という言葉は、特定の物質ではなく、DNA内に書かれた情報そのものを指しています。また、ゲノムには遺伝子以外の領域も含まれていますが、その内容はまだわかっていないことも多いとされています。
【用語まとめ】
- 染色体は細胞の核の中にある遺伝情報を持った物質
- DNAは染色体の構成要素で、A、G、T、Cの塩基を持つヌクレオチドが繋がってできている
- ゲノムは塩基配列によって書かれた生物の設計図全体
- 遺伝子はゲノムの一部で、生物の体(タンパク質)を作るための情報が書かれた設計図
遺伝子から作られるタンパク質
ここからは遺伝子の働きについて見ていきましょう。

遺伝子には、目の色を決める遺伝子、そばかすの有無を決める遺伝子、そして怒りっぽさを決める遺伝子などがあります。
先ほど述べたとおり、遺伝子は人間の体を構成するタンパク質の設計図です。この設計図に沿って作られたタンパク質が、体内で様々な種類の化学物質や他のタンパク質と相互作用することで、目やそばかすの色素、怒りっぽくなるホルモンなどを作り上げています。
1本のDNAには何千、何万という遺伝子の情報が含まれており、人間には約23,000の遺伝子があります。遺伝子の情報の長さ(塩基配列の個数)は、300文字程度の短いものから、100万文字を超える長いものまで様々です。

遺伝子の長さと配列が、そこから作られるタンパク質のサイズと形状を決定します。そして、タンパク質のサイズと形状は、そのタンパク質が体内で持つ機能を決定するのです。
例えば、ヘモグロビンは血中の赤血球に含まれるタンパク質です。ヘモグロビンはそのユニークな形状によって、血液が肺の近くを流れるときに酸素分子を取り込むことができ、酸素不足の組織の近くでは酸素分子を放出することができます。

ペプシンはたんぱく質消化酵素で、胃の中の食物を分解し、体内に吸収させることができます。
ケラチンは細胞骨格を構成するタンパク質の一つで、複数のアミノ酸が結合して構成されています。硬い構造を形成することができ、毛や爪、皮膚の角質層、鳥のくちばしやサイのツノなどもケラチンからできています。
遺伝子の組み換え

地球上の生物は、それぞれ異なる遺伝子を持ち、異なる体を持っています。
しかし、科学者たちが地球上のすべての生命に関連性がある(大元は共通の祖先を持つ)と考える理由の一つは、全ての生物の遺伝子コードが同じA、G、T、Cの塩基配列によって書かれているという点です。

多くの生物は同じ遺伝子を共有しており、人間と近縁種であるチンパンジーは、遺伝子のうち約96%(一致率は諸説あり)が一致しているということは良く知られています。

では、この美しいモデルとハエの一致度はどれくらいでしょうか?実は遺伝子の約半分です。
このように様々な生物がほとんど同じような遺伝子を持っているため、遺伝子工学の研究者たちは、バクテリアの細胞から遺伝子を取り出し、それを動物や植物のDNAに挿入することができるということを発見しました。
そうして生まれた動物や植物の細胞は、遺伝子を読み取り、バクテリアのタンパク質を生産するようになります。
研究者たちは、こうした遺伝子組み換え技術によって異なる生物を混ぜ合わせ、多くの新しい生物を作り出しました。

例えば、“虫には有毒でも人間が食べても(恐らく)安全なトウモロコシ”、“2倍長持ちする腐りにくいトマト”、“人間のタンパク質を作り出すバクテリア”などです。
糖尿病を患う人に必要なインスリン製剤は、大腸菌に人間の遺伝子を組み込んで必要なタンパク質を生成させることで作られています。
遺伝子組み換え技術は他にも、バイオ燃料や土壌の汚染物質除去などでも活用されています。
reference: いちから分かる!「ゲノムの正体を探る」 | バイオステーション (bio-sta.jp)

遺伝子工学には倫理面や安全面で問題がある可能性はあるが、画期的な成果を挙げているということは間違いないようじゃな
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