英語で「Secretarybird(秘書の鳥)」と呼ばれるヘビクイワシは、目元の赤い模様が特徴的なとても美しい鳥です。
後頭部に飾りのような羽根があり、18世紀の書記官がウィッグにペンを挟んでいた様子に似ていることからこの名がついたと言われています。
しかし、この鳥がユニークなのは見た目だけではありません。いくつかの事実を通して、この美しい鳥について学んでいきましょう。
1. 長い足でヘビを蹴って殺す
多くの猛禽類は空から急降下して鋭い爪で獲物を捕らえますが、ヘビクイワシは恐竜を思わせる豪快な方法で狩りを行います。
なんと、長い脚と鋭い爪で獲物を踏みつけて仕留めるのです。踏みつけたときの力は体重の5倍にもなります。
ヘビクイワシはその名のとおりヘビを獲物とすることが多いのですが、中には猛毒を持つものもいるため、噛まれないよう工夫する必要があります。その一つが翼を大きく広げて相手を蹴ることで、ヘビの攻撃を羽の方に誤るよう誘導しているのです。
以下の動画では、ヘビクイワシがどのように相手を攻撃するのかを見ることができます。
また、それほど飛ぶのが得意ではない鳥ですが意外にも行動範囲は広く、獲物を求めて歩きながら1日に30km以上も移動することがあります。
2. ヘビクイワシは人口装具の見本になる?
ヘビクイワシは現存する猛禽類の中で最も長い脚を持つ大型の鳥で、大きい個体で体長1.5メートル、翼を広げると2.1mにもなります。
ヘビクイワシのユニークな身体的構造は、優れた人工装具の開発に役立つかもしれません。
研究者たちは、この鳥が生み出す驚くべき力をスポーツ用の人工装具のメカニズムに利用できないかと考えています。長い足から生まれる速いスピードと強い力は、野球のボールを打ったり投げたりするための義肢に応用できるかもしれません。

3. ヘビクイワシの様々な名前
日本語名の「ヘビクイワシ」という名前は、ここまで読み進めれば妥当と思われるでしょう。英名の「Secretarybird(秘書の鳥)」についても先述しました。
さて、学名の「Sagittarius serpentarius」はラテン語で「蛇の射手」という意味があります。「Sagittarius(サジタリアス)」は射手座のことで、皆さんも聞きなじみがあるかもしれません。
1769年、オランダ東インド会社の役人が、喜望峰からオランダへ生きたまま送られたヘビクイワシについて記述をしました。その際、歩き方が弓のように見えることから、サジタリアス(射手)という名前が付けられたという説があるそうです。

4. 仲睦まじく夫婦で子育てをする
猛禽類の多くの種とは異なり、ヘビクイワシはとても良い親と言えます。一夫一婦制で互いに協力して巣を作り、子育てをします。
巣は最大3.5メートルにもなり、小枝や葉、動物の毛皮、糞などで作られます。メスは通常3つの卵を産み、孵化するまで卵を温め続けます。
猛禽類では珍しく、一度に複数のヒナを育てることができるのも子育て上手な証です。親鳥は子守りとエサ探しを交代しながらヒナを育て、12週が経つ頃には巣立ちの準備が整います。親鳥はヒナに飛び方や獲物の獲り方を教え、やがてヒナは新しい家族を作るためサバンナへと旅立っていきます。
彼らは強い絆で結ばれているからこそ、十分な子育てをすることができ、厳しい環境の中を生き残っていくことができるです。
5. オスはメスのために空中ダンスをする
ほとんどの時間を地上で過ごす鳥ですが、ヘビクイワシは飛べないわけではありません。
彼らは夜になると木の上に飛び立ち、樹上で交尾をすることがあります。求愛の際には、うねるような飛行パターンで高く舞い上がり、鳴き声をあげて婚姻の儀式を行います。
また、求愛行動にはオスとメスが翼を上げ下げしながら追いかけっこをするものもあり、これは縄張りを守るときにとる方法でもあります。

6. 南アフリカやスーダンの国章にも採用されている
ヘビクイワシは、その印象的な外見とヘビを仕留める勇敢な能力から、アフリカでは伝統的に賞賛の対象になってきました。
2000年に採用された南アフリカの国章にもヘビクイワシが描かれています。広げた翼は成長を表し、ヘビを仕留める力は敵から国家を守る象徴とされています。

また、アフリカ諸国の郵便切手のモチーフにもたびたび採用されており、この鳥が存在しない地域であるアジュマン、マナーマ、モルディブを含む国で100枚以上の切手が発行されています。
この記事は、2022年2月27日に投稿した内容を修正・再投稿したものです。
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